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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

ひとり芝居に陶酔し、20代を潰す美人副編集長の病み
怪しい抜擢人事が横行する情報誌の“歪んだ実力主義”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第32回】 2014年3月4日
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 今回は、躍進する出版社の30代の副編集長を紹介しよう。この女性は、「実力主義」を掲げるこの会社に中途採用で入り、30代半ばで部下を6~7人も抱えるやり手編集者である。数年以内に昇格し、編集長となる公算があるという。

 しかし、実はその仕事のレベルは低い。20代の部下たちからは総スカンとなりながらも、得意の「ひとり芝居」を続け、部下を押さえつけ続けるのだという。その背景には、この会社独特の「実力主義」があるように思える。

 今回は、筆者が仕事の関係で2006~09年頃に頻繁に出入りしたこの会社の、「歪んだ実力主義」について問題提起したい。あなたが彼女の部下の立場ならば、どうするだろうか。読者諸氏も、一緒に考えてほしい。


「チッ……。は~、何もできていない」
ひとり芝居で部下を潰す女性副編集長

 ここは、ビジネス書や就職関連の雑誌・書籍をつくることで知られる、社員数300人ほどの出版社。業界では、売上がベスト20に入る。

 3階のフロアにある、単行本や新書などの書籍をつくる編集部に、女性の声が響く。

 「チッ……。は~、何もできていない。赤井さんは、私が言ったことを聞いていなかったんだろうね」

 午後9時半、広いフロアに響く彼女の舌打ち。あえて聞こえるかのように、大きな音を立てているようだ。30代半ばの女性の副編集長(課長補佐)が、長い髪を時折かきあげ、ため息をつく。

 机の上にある原稿用紙に、赤のボールペンで修正を加えていく。手の動きは怒りのあまり、乱暴だ。「初めに修正ありき」のごとく、重箱の隅をつつくかのように、実に細かいところにまで修正を入れる。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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