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石井苗子 心がラクになるストレスコントロール

競争社会に拡がる、
「相手を蹴散らしてでも」という価値観

――時津風部屋力士死亡事件で思うこと

石井苗子 [東京大学客員研究員・女優・精神カウンセラー]
【第9回】

 今回、この連載で私は、ストレスを解決する計画に必要な冷静な判断について、それを助けてくれる3つの力を紹介するつもりでした。

 しかし、2月8日、相撲部屋の元親方逮捕の記事に、どういう精神状態で17歳の子供の、しかも額を、ビール瓶で叩いたのだろうと、いてもたってもいられず、ストレスコントロールからは少々それますが、カウンセリングに携わるものとして考えを述べさせていただきたいと思います。

自己実現を最優先しなければ
乗り遅れてしまう競争社会

 勝ち負けと賞金が、その選手の価値を左右する格闘技の世界に、「しごき」と称される稽古が多少あっても仕方ない、「でもあれは、やりすぎだった。ただそれだけ」という感想を持った人も、私の周りにはいました。競争の世界で生き残るためには、持って生まれた強い性格というのも武器のひとつであり、少々のしごきぐらいは跳ね返せるぐらいでなくては、むしろ乱暴な性格と言われてしまうぐらいの人でないと、格闘技の世界で生き残れないということなのでしょう。

 下記は、あるスポーツ選手の治療を頼まれた心療内科の医師が、心理テストをしている場面です。この選手の気性の強さや、激しさがよく解ります。

質問:「あなたが時計屋さんだったとします。お客様が来て、お宅の時計はよく壊れるとクレームをつけたら、どうしますか?」

選手:「よく調べもしないで買ったオマエが悪いという」

質問:「では、あなたが図書館に行って4冊本を借りようとしたら、規則は2冊までと言われたら、どうしますか?」

選手:「あとの2冊はコッソリ借りるな」

質問:「何かの会話をしている最中に相手から、あなた少し言いすぎじゃないですか? と注意されたらどうしますか?」

選手:「うっせえ!と怒鳴って、相手を黙らせる」

 どうでしょうか。私には、どこかの極道映画に出てくるセリフのような気がしてくるのですが、このくらいの根性がないと格闘技の世界ではやっていけないという人もいます。

 競争社会では、相手を蹴散らしてでも自己実現を最優先する。思い切って強気な行動をとらなければ、乗り遅れてしまう。しかし、現代社会においては、もはや格闘技の世界に限らず、どの業界でもこんな感じなのでしょう。

 私も時々患者さまに、「あなたがストレスを感じないで生きていけるには、どんな人になればいいですか?」と質問することがありますが、「不労所得の億万長者でしょう」と答える人が多くなりました。

 わずらわしい人間関係と無縁に、お金だけ持ってストレスを感じないで生きていきたい。こんな発言に、戦争、伝染病、政治的弾圧などといったストレスではない、お金と人間関係という身近なストレスから起こってくる問題が、日本人にとって最も大きいのだと感じます。

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石井苗子 [東京大学客員研究員・女優・精神カウンセラー]

上智大学卒業後、同時通訳、「CBSドキュメント」初代女性キャスター等を経て、女優として映画、テレビドラマに多数出演。97年聖路加看護大学に学士入学、看護師・保健師の資格取得後、東京大学大学院に進学。2007年、医学系研究科健康科学 生物統計学疫学・予防保健学分野で博士課程を修了後、東京大学医学部客員研究員に就任。


石井苗子 心がラクになるストレスコントロール

都内の心療内科でカウンセラー修業を積んだ石井苗子が、そこで見聞きしたことや自身の経験を踏まえながらストレスコントロールの方法を易しく説く。

「石井苗子 心がラクになるストレスコントロール」

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