HOME

メタボリック

肝臓

腰痛・肩こり

高血圧・高脂欠症

うつ・ストレス

ニオイ

薄毛

老化防止

禁煙

男の病気

石井苗子 心がラクになるストレスコントロール

競争社会に拡がる、
「相手を蹴散らしてでも」という価値観

――時津風部屋力士死亡事件で思うこと

石井苗子 [東京大学客員研究員・女優・精神カウンセラー]
【第9回】

 もはやお亡くなりになってしまった、この17歳の少年が、環境から逃げ出すという、ストレスの認知から始まり、解決方法の順位の一番上にあった「逃げ出す」という計画を成功させるところまで来ていたのに、そこから先の機会をもぎ取られて、連れ戻され「リンチ」で死んだという、怒りと悔しさを想像すると、その残酷さに私は苛立ちに似た感情を抑えることができませんでした。

稼ぎの重さ軽さだけで
測られる人間関係

 今回の事件で、相撲協会が、再発防止対策委員会を発足させたと、先の新聞記事のスポーツ欄に委員長の言葉が掲載されていました。「今は親が子を殺し、子が親を殺す時代。そんな時代に……」と書かれてあり、これを読んで、私の言いたいストレスコントロールが、世の中のスピードについていってないような気がしてなりませんでした。親が子を、子が親を殺す時代と言いきってしまっては、そういう社会なんだと大人が責任を放棄する危険性をはらんでいます。

 親方に「教えてやれ」と命令された20代の兄弟子の狂気はどこに存在していたのか、そういうことまで考えていかなくては再発防止対策委員会にはならないと思います。

 相撲部屋の経営状態、町の警察との関係、閉ざされた世界での絶対的な上下組織。これらすべてが、お金と人間関係に関連しています。メディアの人気や、賞金を稼ぐ個人が一番大切にされ、お相撲のような世界でさえも、全体を引っぱっていくリーダーとしての躾が後回しになります。強い力士がそういうことに気を配ることをしなくなれば、弱い者は取り残される。もはや稼ぎの重さ軽さを測るような物理的人間関係しかないようです。

 亡くなられてから証言をしてくる人の人数が増えていったようですが、7ヵ月もかかっての結果は、いかにその環境がネガティブストレスの塊のようになっていたかが想像できます。

 ストレスは、逮捕された元親方の肩にも、重くのしかかっていたことでしょう。最初から可愛い弟子をビール瓶で叩くような人ではなかったかもしれません。誰がいけなかったなんてことは、一概に言えないかもしれない。そんな気もします。たとえ勝負がすべての格闘技の世界であっても、ひとつだけ正しいことが言えるとしたら、生きていきたいと願う人間を、他人の都合で殺してはいけません。それだけは確かなのです。

<< 1 2 3
このページの上へ

石井苗子 [東京大学客員研究員・女優・精神カウンセラー]

上智大学卒業後、同時通訳、「CBSドキュメント」初代女性キャスター等を経て、女優として映画、テレビドラマに多数出演。97年聖路加看護大学に学士入学、看護師・保健師の資格取得後、東京大学大学院に進学。2007年、医学系研究科健康科学 生物統計学疫学・予防保健学分野で博士課程を修了後、東京大学医学部客員研究員に就任。


石井苗子 心がラクになるストレスコントロール

都内の心療内科でカウンセラー修業を積んだ石井苗子が、そこで見聞きしたことや自身の経験を踏まえながらストレスコントロールの方法を易しく説く。

「石井苗子 心がラクになるストレスコントロール」

⇒バックナンバー一覧