さらに、ファックスの前でも厳しい表情をしていることがあります。周囲からすれば、「極秘資料を受け取っているに違いない」とも思えますが、受信していたのは飲食店の地図。上司に言われて、会食用の店を予約して、その会場の地図を印刷していたのです。もちろんこれも仕事と言えますが、そこまで厳しい顔をして「忙しく仕事をしているふり」をする必要はあるのでしょうか?
この職場のコンサルティングを請け負っていた私もOさんの“忙しいふり”に気がついたので、指摘して理由を尋ねてみました。すると、気まずそうな表情を浮かべながらこんな本音を話してくれました。
「忙しいふりをしているのには理由がありまして……。上司が無駄な仕事を頼んでこないように、ブロックするための口実なんです。それに加えて、忙しい人は仕事ができる人みたいに周囲が思ってくれますから。楽して得できるなんて、最高じゃないですか」
かなり戦略的に忙しいふりをしていたのですね。
日本の職場の多くはテキパキ仕事を終わらせる人より、残業して長い時間仕事をする人を高く評価する傾向があります。内閣府が行った「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」によると、勤務時間の長い部下ほど「頑張っている人」「責任感が強い」などと好意的に考える上司が多いとのこと。ですから、「暇です」と宣言する勇気のある人は少なくて当然で、上司に評価されたい部下からすれば「勤務時間が長い=忙しい」ことをアピールしたくなるのは当然の行動かもしれません。
では、Oさんの忙しいふりについて、あなたはどのように捉えますか?
・ずる賢い奴
・いいんじゃないの
・許せない
きっとさまざまでしょう。しかしHさんは、「許せない」と悪い印象をもっている様子。「Oさんは忙しい」と周囲が思い込んでいるばかりに、自分や他の同僚に「面倒な仕事=ツケ」がまわってきていることが多いと感じているからです。そこでHさんは、
「Oさんは自分が楽をしたくて、暇でも忙しいふりをしている」
と周囲に触れ回っています。おそらくこうした活動が功を奏して、周りからの認知も高まってきていることでしょう。はたしてOさんの行為は今、周囲にどう思われているのでしょうか?
