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大震災3年目の「今」を問う

日和幼稚園訴訟を生んだ「私学」の壁
園児遺族が遭った3年間の“たらい回し”

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第4回】 2014年3月12日
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一審判決は遺族側の全面勝訴。しかし記者意見での遺族たちの表情は、最後まで険しいものだった(2013年9月17日仙台市内)
Photo by Yoriko Kato

 少し前のことになるが、今年1月末、東日本大震災で5人の児童が犠牲になった私立日和幼稚園(宮城県石巻市)の園バス被災をめぐる、損害賠償請求の控訴審が仙台高裁で始まった。

 4人の園児の遺族が2011年8月、幼稚園に安全配慮義務違反があったとして、経営母体である学校法人長谷川学院を相手に計約2億6700万円の損害賠償請求訴訟を仙台地裁に起こした裁判。昨年9月の一審判決は、園側の過失を認定し、計約1億7700万円の賠償支払いを命じた。

 園側は一審判決を不服として控訴。今年1月31日の控訴審の第1回口頭弁論では、園側は一審判決の敗訴部分の取り消しと請求棄却を求め、遺族側は控訴棄却を求めた。齊木教朗裁判長は、和解の可能性についても、双方から意思を確認した。

震災から5ヵ月後には訴訟へ
立ちはだかった「私学」という高い壁

 原告である遺族たちはいま、日和幼稚園の事故の教訓を幼児教育の現場に生かすために、何ができるかを考え始めている。

 東日本大震災における組織の安全管理を問う裁判の中でも、日和幼稚園の遺族が訴訟に踏み切ったのは、発災から5ヵ月というかなり早い時期だった。同じ学校管理下の被災事故でも、筆者が取材してきた、同じ石巻の市立大川小学校(児童・教職員84人が死亡または行方不明)の一部の児童遺族が、民事訴訟の時効が迫る今月10日に提訴したのとは、時期的に大きな開きがある。

 日和幼稚園の遺族が早々に訴訟を起こしたのは、園側から得られる情報があまりにも少なかったからだ。

 公立校ならば、情報公開制度を利用して、学校や教育委員会が作成した文書を開示できる。しかし、日和幼稚園を設置・運営するのは民間の学校法人。遺族たちの前に、私学の壁が立ちはだかった。

 震災直後、日和幼稚園が、遺族向けに開いた説明会は、震災直後の4月と5月のたった2回。説明会で遺族に配布されたのは、A4で1枚の避難マニュアル等わずかな資料だけだった。

 説明会で質問をしても、園側は当日の園内の状況やバスの状況すら正確に把握できていない。事故に至るまでの当日の詳細や、事故の背景要因について、園はあいまいな回答を繰り返した。

 事態が進展しないと思った遺族たちは、自ら現場周辺や警察、他の保護者などに聞き込みをするなどして、当日の状況や、園バスのルートを自力で調べ上げた。それでも、わからないことが多かった。

 当日の状況や事故の背景を知るための闘いについて、当時6歳の明日香ちゃんを亡くした佐々木めぐみさんは、一審判決後の記者会見でこう振り返っている。

 「お世話になった先生方をどうだったのかと突きつめ、その結果得た真実というのは、あまりにも少なかった。ほとんどなきに等しい」

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大震災3年目の「今」を問う

この3月で東日本大震災から丸3年が経つ。被災地ではいまだ校庭に仮設住宅が建っているため、自分が入学した中学校の校庭で一度も運動できず卒業する生徒たちもいるというほどの長さだ。各自治体も、被災者もそれぞれ生活や考えに、時の流れに伴う変化が表れているという。日常では震災関連の記事が極端に少なくなる中で、自戒の意味を込めて被災地の「今」を追う。

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