最近、聞きなれない言葉に出会う。「コピペ設計」「チェンジニア」などだ。これは、似ている過去図面を引っ張り出し、差分だけ修正を行う設計者やその行動を揶揄する言葉である。

 それにしても、いつの頃からだろうか。設計のゲンバでさばく、こなすような仕事の仕方が増えてきてしまったのは――。確かに、ゼロから図面を描くよりも、似た図面を修正した方が早い。だが設計とは、本来「考える行為」である。

「社会を変える製品をつくりたい!」そんな志を持って製造業の門戸を叩いた人が多いはずだ。しかし、効率、スピードを求める企業環境の中では、逆の力が作用し、自然とコピペ設計者やチェンジニアが増えていく。

 過去3回の連載では、新興国との差が縮まりつつある要因に日の丸製造業の相対的な技術力の低下、すなわち「事業で負けているが、技術で勝っている」という認識が危うくなっている危険性をお伝えしてきた。今回は、製造業としての足腰である「技術力」を高めるための道筋の一端をお伝えしたい。そして、この一端を実現することで「超高速擦り合わせ型モノづくり」に近づいていく。

流用設計ばかりでは人が育たない
自動車部品会社での残念な出来事

 以前は、コピペ設計やチェンジニアを「流用設計」と呼んでいた。流用設計の怖さは、その設計に至った意図を知らずに盲目的に設計をしてしまう点だ。「先輩が設計したので安心だ」「前の図面がそうなっていた」という考え方で設計をしていると、考える力が失われ、技術を探究する意欲も失われ、良い設計者にはなれない。

 先日、このような話があった。ある大手自動車部品会社(C社)での出来事だ。C社では、トヨタ、日産など主たる取引先の要望に横断的に対応する新製品開発プロジェクトが立ち上がった。このチームリーダーに、主任技師の竹内さん(仮名)が任命された。竹内さんは入社10年の中堅社員だ。