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岸博幸のクリエイティブ国富論

人気映画「X-MEN」公開前ネット流出の衝撃
コンテンツ業界の自助努力はもはや限界

ルール変更が必要なのは金融と環境だけではない!

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第35回】 2009年4月10日
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 米国ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであり、「フラット化する世界」の著者としても有名なトーマス・フリードマン氏が、先週、非常に興味深い意見を同紙に掲載しました。その内容を要約すると、以下のとおりです。

・金融危機と地球環境問題の原因は本質的に同じである。デリバティブなどの金融商品と化石燃料を使ったエネルギーの双方について、社会にとっての本当のコストとリスクを反映しない形で価格が設定されてきた結果、膨大な不良債権(toxic assets)と大気汚染(toxic air)が発生したのである。

・金融機関やエネルギー企業のバランスシートは本当のコストやリスクを反映していない。その状況下で、それらの企業が巨大過ぎて潰せない(too big to fail)と、利益が出たら企業のステークホルダーが享受する(privatize)一方で、損失が出たら納税者にツケ回しされる形で社会が負担する(socialize)ことになる。

・だからこそ、これからは“市場よりも自然の摂理に従った会計基準”(“Market to Mother Nature” accounting)が必要である。それは、金融システムについては賢い規制(smart regulation)、地球環境問題については炭素税(carbon taxation)に他ならない。資本主義のエンジンは必要だが、多少の修正が不可欠となっているのである。

・金融の本来の目的は、“創造的破壊”(creative destruction)のプロセスを支援して、イノベーションが世の中を良くするのに貢献することだったはずなのに、カネがカネを生む誤った金融イノベーションに注力してしまった結果、“破壊的創造”(destructive creation)を引き起こしてしまった。

 解決策として一方では規制を、他方では税を推奨するなど、ロジックとしてはちょっと乱暴な部分もありますが、私は個人的に、この主張にかなり共感を感じています。もっとも重要なポイントは、「今の金融商品とエネルギーの価格が社会的なコストとリスクを反映していない」という主張ではないでしょうか。ある意味で今の資本主義が直面している最大の問題点を端的に表現しており、今の世界で最も深刻な課題となっている金融問題と地球環境問題はこの点で本質的に同じなのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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