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かの残響、清冽なり――本田美奈子.と日本のポピュラー音楽史

「東京ラプソディ」(1936年)大ヒット、
古賀政男と藤山一郎の戦略でテイチク飛躍

坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]
【第49回】 2014年4月18日
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1936(昭和11)年6月に帝国蓄音器(テイチク)から発売された「東京ラプソディ」は大ヒットした。古賀政男、藤山一郎の作曲家・歌手のコンビは5年ぶりに復活したのである。「花咲き花散る宵も……」と始まる美文調の軽快な詞で、古賀政男はそれまでのヨナ抜き五音音階ではなく、西洋音階で書いている。

藤山一郎の歌唱法

藤山一郎の初期作品集「国民的歌手 藤山一郎全集~テイチク・ビクター編」(CD3枚組、日本伝統文化振興財団、2011)のジャケット。日本伝統文化振興財団はビクターが設立した公益財団法人。

 行進曲の速度、4分の2拍子、古賀政男は楽譜に「Paso Doble」(パソ・ドブレ)で、と指示している。パソ・ドブレはフラメンコ調のダンスのことだそうだ。前半はホ短調(Em)、上向音形で始めてやや哀愁を漂わせ、後半は一転してホ長調へ転調しオクターブ上のE(ミ)から下向音形の情熱的な曲想に変わる。

 1993年に東京都がアルバム「TOKYO」(BMGビクター)を制作したことは連載前回に書いた。収録曲10曲の歌手、作詞家、作曲家、編曲者を再掲する(★=オリジナル新作)。

①TOKYO~ instrumental~作曲編曲・服部克久★
②I LOVE TOKYO…本田美奈子、作詞・湯川れい子、作曲・小林亜星、編曲・鈴木武生★
③TOKYOプラスティック少年…男闘呼組、作詞作曲・高橋ヤズカ、編曲・男闘呼組&ゲーリー・チョビ★
④デスカルガ東京…ORQUESTA DE LA LUZ、作詞作曲編曲ORQUESTA DE LA LUZ★
⑤東京ブギ…GO BANG'S、作詞・鈴木勝、作曲・服部良一、編曲・GO BANG'S
⑥ウナセラディ東京~Vocalise~…佐藤しのぶ、作詞・岩谷時子、作曲・宮川泰、編曲・服部克久
⑦東京の屋根の下…EPO、作詞・佐伯孝夫、作曲・服部良一、編曲・服部隆之
⑧東京マップラップ…作詞・奥山侊仲、作曲編曲・宮川泰★
⑨東京ラブソディ…SMOKEY MOUNTAIN、作詞・門田ゆたか、作曲・古賀政男、編曲・ 堀井勝美
⑩TOKYO~Chorus version~…サーカス、作詞・岡田冨美子、作曲編曲・服部克久★

 本田美奈子さんの曲は新作で、⑨に「東京ラプソディ」が入っている。当時のこの新編曲版を聴くと、ヴォーカルがやや崩し気味に歌唱していてポップなのだが、音程が少しあやふやだ。古賀政男はホ短調からホ長調へ転調する面白さを出している。ホ長調は♯が4つ付くので、とくに短調のD(レ)と長調のD♯(レ♯)を明確に発声しないと長調へ転じた爽快感が曖昧になってしまう。

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坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

1954年生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集長などを経て現職。著書に『複雑系の選択』『めちゃくちゃわかるよ!経済学』(ダイヤモンド社)『浦安図書館を支える人びと』(日本図書館協会)など。


かの残響、清冽なり――本田美奈子.と日本のポピュラー音楽史

日本のポピュラー音楽の誕生をレコード産業の創始と同時だと考えると、1910年代にさかのぼる。この連載では、日本の音楽史100年を、たった20年の間に多様なポピュラー音楽の稜線を駆け抜けた本田美奈子さんの音楽家人生を軸にしてたどっていく。

「かの残響、清冽なり――本田美奈子.と日本のポピュラー音楽史」

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