「2014 FIFAワールドカップ」(ブラジル大会)がまもなく開幕する。普段はサッカーに関心がない人も、ちょっと浮き足立っているのではないだろか。なにしろ(意外に思うだろうが)、日本人は世界で最もW杯好きの国民なのだ。もちろん、サッカー好きということで言えば、特にヨーロッパや南米には、どう考えても日本人よりサッカー好きの国民はたくさんいる。しかし、ことW杯に関しては、実は日本人が(ある意味で)最も盛り上がっているのだ。その理由は、テレビ中継の視聴時間だ。
FIFAの資料によれば、2010年の前大会(南アフリカ大会)でW杯中継を連続20分以上見ていた人の、その国の人口に対する割合は、日本が80%強でトップ。以下、スペイン、アルゼンチン、ブラジル、ドイツ、イタリア、イギリスと続く。このあたりの国では、おおむね70%から80%の人たちがW杯を見ている。一方でW杯を見ていないのはたとえばアメリカ人、中国人などで、アメリカ人は30%弱、中国人は20%くらいしか見ていない。テレビ普及率の影響も大きいとは思うが、インド人はほとんどW杯を見ていない。この資料には、韓国のデータが掲載されていないのが気になるが、日本人が世界で最もW杯を見ているのは事実のようである。
サッカー王国ブラジルで起きた
W杯反対運動
というわけで、6月13日朝の3時(日本時間)の開会式以降、約1ヵ月にわたって日本中が熱狂と寝不足に巻き込まれること必至なのであるが、今回の大会ではいつものように、素直にお祭り騒ぎを楽しめない空気感も漂ってきている。貧困や生活インフラ、教育インフラの未整備に対する抗議デモ、そして低所得者層の賃上げ要求のストライキなど、社会矛盾の表出である。
もちろん、国際的に大きなイベントがその陰で、さまざまな社会矛盾を孕んでいるという実情は、このW杯ブラジル大会だけではない。前回W杯を開催した南アフリカや、2008年のオリンピックを開催した中国、そしてかつての韓国や日本。急成長した会社がすぐに本社ビルを建てたがるように、急成長した国もまたすぐに国際的なスポーツイベントを開催する。そして、スタジアムをバンバン建てまくる。
その工事の騒音に、社会的矛盾に苦しむ人たちの嘆きはかき消される。そして、ホームレスやギャングなどの社会的矛盾を象徴する「あってはならない人たち」が、国際イベントの開催とともにストリートからかき消され、「なかったこと」にされてしまうように、そのイベントを楽しむ観客もメディアも、社会的矛盾やそのために苦しむ人たちを「なかったこと」にしてしまう。それがこれまでの国際的なスポーツイベントだった。