古代、薬用植物として日本に伝来した蒜(または大蒜)には、たくさんのエピソードがあります。

 我が国最古の歴史書である『古事記』には、「日本武尊《やまとたけるのみこと》が東国を平定した帰り、白鹿に化けた坂の神を食べかけの蒜で撃ち殺して山を越えた」ことが書かれています。

豊臣秀吉大出世の一助を担い、<br />徳川家康の最後の晩餐に供された「蒜《にんにく》」にんにく梅干し漬け
【材料】にんにく…1玉/梅干し…2個/鰹節削り…1/2パック/胡桃…小さじ2
【作り方】 ①梅干しは種を取って叩く。胡桃も庖丁で叩いて細かく砕き、鰹節削りと混ぜ合わせる。②にんにくの皮を剥き、1/2~1/4に切り、1と和えて保存容器に入れ、冷蔵庫で保存する。

 まるでヴァンパイア対策のようですが、蒜にはこのように、精をつけるだけでなく、神気をはねのけるパワーがあると信じられていました。

 日本最古の和歌集、『万葉集』第十六巻にはなんと、美味しい蒜の食べ方が歌に詠まれています。

「醤酢《ひしおす》に 蒜《ひる》搗《つ》きかてて 鯛願ふ 我れにな見えそ、水葱《なぎ》の羹《あつもの》」
※平安時代まで、蒜は「ひる」と呼ばれていました