自宅にある大量の本。場所を取るし、減らしたいが、古本屋に売るのは忍びない。かといって、自分でスキャンして電子書籍化(いわゆる「自炊」)をするほどの時間も根気もない。

 そうした場合に多くの人々が利用してきたのが、自炊代行サービスだ。しかしこれは著作権を侵害するため、一部の例外(著作権フリー、著作権が切れているなど)を除いては、合法に利用することができない。

 そこで登場したのが、カナダのバンクーバーを拠点とする「BitLit」だ。同社は出版社と直接契約を結ぶことにより、利用者が現在所有する紙の本のデジタル版を出版社から入手、無料または格安で提供するというサービスを行っている。

表紙の写真を撮影するところからスタート

まずは本の表紙を撮影する

 BitLitの利用法は簡単だ。Google Play、またはApp Storeから、専用アプリをダウンロードする。次にデジタル版が欲しい手持ちの書籍の表紙の写真を、説明にしたがって撮影する。

 次にその手持ちの本の、著作権が書かれたページの一番上に、すべて大文字で、自分の名前を手書きする。書き終わったら、そのページも撮影する。BitLitは利用者から送られてきた写真と、図書目録データおよび出版社のメタデータ、そして登録されている名前と手書きの名前を照合する。この段階で、紙の書籍のデータが利用者の所有物として登録される。

 照合作業が終了すると、提供可能なフォーマットが利用者にメールで通知される。あとは希望のフォーマットをクリックしてダウンロードするだけだ。デジタル書籍はKobo、Nook、Kindle、iPadなどで読むことができる。

照合されれば、あとはダウンロードするだけ

約80の出版社と契約

 BitLitによれば、同社のサービスに関心を示す出版社は少なくない。デジタル版の収入増が期待できるのはもちろん、デジタル版があわせて入手できるとわかると、紙の本を買おうという心理が読者側に働くという調査結果があるという。また出版社が読者と直接つながることができるというメリットもある。

 現時点で、O’Reilly、Other Press、ECW Press、Greystone Books、New Star Books、Chicago Review Pressなど、80社以上と契約を結んでいる。1万タイトル以上のデジタル版が用意されており、うち約30%は、紙の書籍を所有していれば、無料で入手できるという。

 ただし現在サービスが利用できるのは米国、カナダ、英国のみだ。