経営 × オフィス

弱者へのストレスのつけ回しがブラック化の真因?
うつ社員が溢れる「忍耐消滅職場」はあなたがつくる

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第4回】 2014年7月9日
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必ず共通するのは上司がヒドイこと
組織全体を蝕む「ブラック化」の予兆

 連載「黒い心理学」では、ブラックな組織で働く人が苦しみながらもなぜ辞められないのかを、心理学のいくつかの理論を紹介しながら数回にわたって解説してきた。

 しかし、ブラック組織で苦しみながらも、日々の糧のために歯を食いしばって働いている人がいる一方、ブラック組織でうまくやっている人もいる。

 「うまくやっている」という言い方は、失礼に当たるかもしれない。自分では「真面目」に働いているつもりの人もいるだろう。だが結果として、ブラック組織で「長く生き残る」人は、ほぼ例外なく「ブラック社員」にならざるを得ない。

 「ブラック組織」で苦しみながら働く人に、必ずと言っていいほど共通するのは「上司がひどい」という点だ。「仕事はきついが上司はいい」という職場は、基本的にブラックではない。

 ネットなどでは、「もう3ヵ月、休日が一度もない」「インフルエンザで39度の熱が出て会社に電話したら、上司に『それでも出て来い』と言われた」「台風で電車が動かなくても、定時出社するのが当たり前だと怒られた」などというエピソードをしばしば目にする。

 そういった話のどこまでが真実かはわからないが、それほどのエクストリームなケースに至る前に、組織の中では「ブラックの予兆」と言ってもいいような出来事が起こる。

 そういった出来事は、「ブラック企業」などと呼ばれる前の組織で頻繁に起こり、やがて組織全体をブラック化していく。そんなブラックの予兆となる出来事の1つを、紹介したい。

 次に紹介するのは、名前を聞けば多くの日本人が知っている企業の職場のケースだ。組織の特定と情報提供者の匿名保持のために、多少の改変をしている。

 この職場では、派遣社員と、正社員が混在して働いている。政府系の職場なので、取引先は官庁ばかりだ。なので、基本的に官庁には頭が上がらない。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

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