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経営参謀
【第1回】 2014年7月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
稲田将人 [株式会社RE-Engineering Partners代表、経営コンサルタント]

プロローグ
低迷するブランドを半年で立て直せ

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大手紳士服チェーン「しきがわ」を退職した高山昇は、レディースアパレルを複数展開する一部上場企業、グローバルモード社に転職する。高山は、社長の田村から直々に低迷する事業の立て直しを命じられる。しかも、その期限は半年――。果たして、高山は社長の期待に応えられるのか? 若き参謀、高山昇の奮闘ぶりを描く『経営参謀』が6月27日に発売になりました。本連載では、同書のプロローグと第1章を5回に分けてご紹介します。

最終面接

 「つまりあなたは、同質化した競争状況にある郊外型紳士服チェーンの『しきがわ』で改革に取り組んだわけだ。経営企画の立場で経費管理や人事制度の改革を行い、そして新規業態の立ち上げまで成功させた…、とこういうわけだな」

 田村は右手であご鬚を触りながら、改めて高山の職務経歴書を眺めた。

 東京・汐留にある住元第二ビルの23階。株式会社グローバルモードの役員会議室で、高山昇は二代目社長の田村富三と向かい合っていた。

 レディースアパレルを展開するグローバルモードは、売上高880億円、従業員1200人を擁する東証一部上場企業。

 高山は、同社の中途採用試験に応募し、今日がその最終面接の日だった。

 「ではなぜ、そのまま『しきがわ』に残って改革の仕事を続けようとしなかったのかね?」

 田村の問いに高山は、自分の考えをまとめようと目線を下げた。その様子を見ながら田村は、さらに質問を続けた。

 「君のように、明らかな結果を出している社員なら、自分の待遇には、まず不満はないはずだ。表向きはどうあれ、会社への不満があったのではないのかな。少なくとも面接する側からすれば、そう考えるのが妥当だが…。どうだ?」

 田村に促され、高山は顔を上げた。

 「そのほうが、自分のために良いと思ったからです。会社というものは常に、いろいろな課題を抱えていて、それに取り組んでいかねばなりません。そのためには自分が場数を踏むことがいちばん重要なのだと思いまして…」

 我ながら青臭い答えだとも思ったが、高山には他に良い表現も思い浮かばなかった。

 「自分のためか…。ふむ、まあ確かにその通りだな」 高山の話を聞いていた田村はさらに、「同じ業務を毎日繰り返すような仕事はもう卒業したい、ということでもある」と独り言のように言った。

 田村は、しばし高山を凝視していた。そして突然、強い口調で言った。

 「高山君。今のうちに必要なのは、君のようにイニシアティブを持つ人材なのだ!」

 高山は、田村の勢いに一瞬たじろいだが、グローバルモードの内部事情はわかるわけもなく、「はあ、そうですか」と、なんとも間抜けな答えをしてしまった。

 「高山君、あなたにやってほしいことがある」

 高山は社長からの、じきじきのこの言葉には内心、少しだけ嬉しくなった。 田村は高山の心情を知ってか知らずか、熱く語り続けた。

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稲田将人(いなだ・まさと)  [株式会社RE-Engineering Partners代表、経営コンサルタント]

早稲田大学大学院理工学研究科修了。豊田自動織機製作所よりの企業派遣で米国コロンビア大学大学院コンピューターサイエンス科にて修士号を取得した後、マッキンゼーアンドカンパニーに入社。マッキンゼー時代は、大手電気企業、大手建設業、大手流通企業などの戦略策定や経営改革などに携わる。その後は、企業側の依頼により、大手企業の代表取締役社長、役員、事業・営業責任者として売上V字回復、収益性強化などの企業改革を行う。これまで経営改革に携わったおもな企業には、アオキインターナショナル(現Aoki HD)、ワールド、ロック・フィールド、日本コカ・コーラ、三城、卑弥呼などがある。2008年8月に(株)RE-Engineering Partnersを設立。成長軌道入れのための企業変革を外部スタッフや役員などの役目で請け負う。戦略構築、しくみづくりにとどまらず、社内に機動的な参謀チーム、改革スタッフを養成し、企業が永続的に発展するための社内の習慣づけ、文化づくりを行い、事業の着実な成長軌道入れまでを行えるのが強み。


経営参謀

レディースブランドを複数展開するグローバルモード社に転職した高山昇は、同社の田村社長から低迷するブランドを「半年間で立て直してほしい」と依頼される。しかし、いざ現場に配属されてみると、思うように周囲の協力が得られない。そんなある日、高山が思いついた集客アイデアが功を奏し、売上が急上昇。周囲の高山を見る目がガラリと変わり、改革が動き始める。持ち前の行動力とひたむきさを武器に、社内の地雷を踏みまくりながらも事業のV字回復に取り組む主人公の姿を通して、経営参謀のあるべき姿をリアルに描く。

「経営参謀」

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