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プーチン政権想定外のマレーシア航空機撃墜
ウクライナ東部安定化へのカギとなる可能性
――ジャーナリスト・仲野博文

仲野博文 [ジャーナリスト]
2014年7月24日
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Photo:AP/AFLO

今月17日にオランダのアムステルダムからマレーシアのクアラルンプールに向かっていたマレーシア航空17便が、ウクライナ東部ドネツク州で地対空ミサイルによって撃墜された。乗客乗員の298名全員が死亡した今回の撃墜事件は、最近も複数のウクライナ軍機が親ロシア派武装勢力によって地対空ミサイルで撃墜されているウクライナ東部で発生したが、「誰がミサイルを発射したのか」という点でアメリカやEUに支援されたウクライナと、ウクライナ東部の親ロシア派勢力を支援しているとされるロシアとの間で言い分が真っ向から対立。親ロシア派勢力がミサイルを発射したという説が強まるなか、プーチン政権に対する風当たりはさらに厳しいものに。専門官の話も紹介しながら、マレーシア航空機撃墜事件について考えてみたい。

軍用機の撃墜が相次ぐウクライナ東部で
派生した突然の悲劇

 17日に発生したマレーシア航空機撃墜事件をめぐって、ウクライナとロシアがそれぞれ大きく異なる見解を発表している。

 ウクライナやアメリカは、マレーシア航空機が親ロシア派勢力によって、地対空防空システム「ブーク」のミサイルによって、誤って撃墜された可能性が高いとする見解を発表。反対に、ロシアはウクライナ軍が自ら保有するブークで誤射をした疑いがあると主張。ロシアの主要メディアは、マレーシア航空機が撃墜される直前に、近くを飛行していたウクライナ軍のスホーイ攻撃機によって撃墜された可能性も否定できないと報じている。

 親ロシア派勢力がミサイルを発射した事実を完全に証明できるものはないが、アメリカは衛星写真から捉えた地対空ミサイルの弾道を示した写真を公表。親ロシア派だけではなく、プーチン政権に対しても厳しい声が相次いでいる。新たな対ロシア経済制裁案が浮上するなか、今回の撃墜事件はプーチン政権にとって、そしてウクライナにとってどのような意味を持つのだろうか。

 国際政治学の修士号を持ち、現在はウクライナ西部でNGOのメンバーとして活動するビクトル・ザグレバ氏は、マレーシア航空機の撃墜が結果的にロシアのプーチン大統領の対ウクライナ政策を変える引き金になるだろうと語る。

「マレーシア航空機の撃墜がロシアから軍事支援を受ける親ロシア派勢力によるものだという見方が強くなるなか、プーチン大統領はこれまで描いてきた計画を見直さざるをえなくなった。撃墜事件が発生する以前、ウクライナ軍と親ロシア派勢力が戦闘を続けるウクライナ東部にロシア軍部隊が侵攻する準備を整えているというニュースがウクライナ国内では大々的に報じられたのだが、ロシアに対する各国の非難が高まるなかで、プーチン大統領が実際に軍事侵攻を起こすリスクを冒すとは考えにくい」

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仲野博文 [ジャーナリスト]

甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。ツイッター:twitter.com/hirofuminakano

 


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