いまや観光名所ににもなった武雄市図書館。明るくおしゃれな中に知的な雰囲気が漂う。新刊の書籍売り場と貸出図書(約20万冊)が併存するユニークな空間だ。リニューアル費用はシステムなども含め約4億5000万円、設計は宮原新氏の手による photo:DOL

いま、よくも悪しくも、日本で一番物議を醸す市長といえば、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長だろう。総務省の官僚を辞めて2006年4月に武雄市長に当選。当時、36歳で全国一若い市長の誕生だった。その後、「佐賀のがばいばあちゃん」のロケを誘致、大きな赤字に悩まされていた市民病院を民営化しようとした際には、リコール(解職請求)運動が起こり、自ら辞職して再選挙に臨み勝利した。

さらに、武雄市図書館の改革にも着手。CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)を指定管理者として運営を委託し、13年4月にリニューアルオープンした。いまや同図書館は年間来場者100万人近くに達する。今年の4月には民間の学習塾「花まる学習会」と連携し、「官民一体型」の小学校創設を発表するなど、その改革はとどまるところを知らない。

一方、樋渡市政に対しては、「独善的」「話題先行」との批判もある。そこで、同市長に改革の根底にある理念や思想は聞いてみたくて武雄市を訪れた。インタビューは武雄市図書館内の一室。樋渡市長は白に襟回りがブルーのポロシャツ姿で現れた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎)

劇場化して関心を引き寄せる

――矢継ぎ早に改革を進めておられますが、その根底にある理念というか、考え方はどのようなものですか。

 地方が一番だめなところは、無関心なんですよ。マザー・テレサも言っているじゃないですか。「好きの反対は嫌いじゃありません。無関心です」と。無関心になるとみんなが当事者意識をなくしてお任せ状態になるし、結局、力のある人たちだけが密室でいろんなことを決めていくから、地方ってだめになっていったと思うんです。

 だから大事なのは、地方自治体がガラス張りであるという、当たり前のことです。もっと大事なのは劇場化するということなんですね。劇じゃないとだれも見ないから。だから、市民病院も図書館も、仮想敵をつくって――まあ本当に敵になっちゃったんですけど――そういう劇場化することで、関心を引き寄せてきたということなんですよ。