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石川和男の霞が関政策総研

原発の“ゼロリスク”追求政策は愚の骨頂
「停止リスク」の増幅こそ本当のリスク

石川和男 [NPO法人 社会保障経済研究所代表]
【第26回】 2014年8月11日
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今夏は2011年以来の原発ゼロ
「停止=安全」ではない

 昨年、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、原子力発電所の規制基準に係る適合性審査に要する期間は「半年程度」と語っていた。その言葉は、今では何とも空虚なものに感じられる。原子力規制委員会の審査が1年を超えるほど遅延・長期化したため、今夏、2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、初の“原発ゼロ”となった。

 九州電力川内原子力発電所1・2号機については、7月中旬に原子力規制委員会から審査書案が提示され、合格の方向が明確になったものの、具体的な原子力発電再開の見通しが立った原子力発電所は未だ一つもない。

 老朽火力発電所を総動員して、綱渡りの電力供給をせざるを得なくなっているだけではない。電気料金の高止まり、原子力発電停止に伴う追加的な火力発電による、年間ベース3.6兆円もの莫大な国富流出やCO2排出増が続いている。

 国民経済的にも相当な打撃を与え続けている“原発ゼロ”。米国(スリーマイル島)や旧ソ連(チェルノブイリ)は原子力発電所事故の先例だが、それらの事故によって他の原子力発電所をいたずらに停止したことはなく、まして国内の全原子力発電所を停止したことなどまったくない。こうした米ソの事故先例からしても、日本のこうした先例なき“原発全基停止”という異常事態は、いったいいつになったら解消されるのだろうか。現時点では、その見通しは全く立っていない。

 一つには、原子力規制委員会の審査に合格したものでなければ原子力発電再開を認めないという現安倍政権の姿勢にある。本連載でも繰り返し述べているように、原子力事業は、“停止=安全”ではなく、“発電=危険”でもない。発電していようが停止していようが、核燃料の存在そのものが危険なのであって、その管理こそが肝要なのだ。いたずらに原子力発電を停止させ続けておくことで、安全上の課題が解決されるわけではなく、むしろそれによる現場の士気低下や離職を招くことの方がよほど危険なことである。

 これは、原子力発電所の『稼働リスク』ならぬ『停止リスク』なのだ。

 原子力規制委員会は、審査を受ける側である原子力事業者の姿勢や対応の問題点を強調してばかりいる。だが私からすれば、“世界で一番厳しい規制”とやらを標榜しながらも、グローバルスタンダードを離れて、勝手にガラパゴス化した非現実的な規制とその運用に陥っているようにしか見えない。

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石川和男 [NPO法人 社会保障経済研究所代表]

1989年3月東京大学工学部卒業。同年4月通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁、生活産業局、環境立地局、産業政策局、中小企業庁、商務情報政策局、大臣官房等を歴任。2007年3月経済産業省退官。08年4月東京女子医科大学特任教授(~10年3月)。09年1月政策研究大学院大学客員教授。09年4月東京財団上席研究員。11年9月NPO法人社会保障経済研究所代表。ツイッター:@kazuo_ishikawa ニコ生公式チャンネル『霞が関政策総研』、ブログ『霞が関政策総研ブログ』


石川和男の霞が関政策総研

経済産業省の元官僚として政策立案の現場に実際に関わってきた経験と知識を基に、社会保障、エネルギー、公的金融、行政改革、リテール金融など、日本が抱えるさまざまな政策課題について、独自の視点で提言を行なっていく。

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