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中高年のヘッドバンギング

井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-
【第211回】

 真夏のロックフェスも一巡し、往年のロック小僧たちも一息ついているだろうか。

 今年は年初からザ・ローリング・ストーンズをはじめロック界のレジェンドの来日が相次いだ。身過ぎ世過ぎに汲々としている若年層より、可処分所得に余裕がある中高年層をターゲットにしたエンターテインメントが盛り上がっているのは世界的傾向で、ついに世界五大医学誌の「ランセット」にまで「オヤジとロック」に関連する症例報告が掲載された。

 ドイツ・ハーノーバー医科大学の医師らによると、ロック音楽に合わせて前後に激しく頭を振る「ヘッドバンギング(以下、ヘドバン)」は脳内出血を引き起こす可能性があるという。

 医師らの施設に50歳の男性が来院したのは2013年1月のこと。2週間前から頭痛があり、次第に悪化してきたので受診したそうだ。男性の病歴はというと、これまで脳疾患の既往もなく、健康状態は良好。血液検査の結果もごく普通だった。ただし問診の結果、4週間前に英国のロックバンド「モーターヘッド」のコンサートでヘドバンを繰り返してきたことが判明している。すぐにCT検査を施行したところ、脳の右側に硬膜下血腫が発見された。

 硬膜下血腫は脳を覆う膜と脳との隙間に生じた出血がたまったもの。正常範囲を超える量の水分が貯留して脳が腫れ、そのまま放置すると、頭蓋内の圧力が上昇してかなり危険な状態に陥る。この男性も結局、頭蓋骨に孔を開けてチューブを差し込み、血腫を除去するとともに頭蓋内の圧力を下げるドレナージが施行された。

 ロックコンサートが高くついたものだが、幸い術後8日目に無事退院し、その後の経過も良好だ。医師達の見立てによると、頭を前後に激しく振るヘドバンによって毛細血管が破裂し、硬膜下血腫を引き起こした可能性があるらしい。

 医師らは「この症例はモーターヘッドの『地球上で最もハードコアなアクト』という評判を裏付けるエビデンスだ」と大真面目に述べた後、改めてハイスピード・ヘドバンの脳挫傷リスクを警告している。以上、ロックな報告でした。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 

週刊ダイヤモンド編集部


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