この夏、世界的な大ブームとなった「アイスバケツチャレンジ」。筋萎縮性側索硬化症 (ALS) という難病の認知度を高め、寄付を集めるためのアクションで、SNSなどで知人などから指名された人はバケツ一杯の氷水を頭からかぶるか、寄付をするというルール(両方を行なうことも可)。多くの人が氷水をかぶり、その模様を撮影した動画をYouTubeなどにアップ、公開した。Facebookの自分のタイムラインが氷水だらけになった読者も多いことだろう。

 これだけ大きな話題となれば当然、批判も出てくる。ネット上でも賛否両論の議論が繰り広げられ、雑誌などマスメディアでも批判記事などが出てきた。このアクションに対して、僕は基本的に賛成の立場だ。その理由については後述するが、その前に読者に伝えたいのは、ソーシャルアクションにおける「頭の悪さ」の効用についてだ。

くだらないけど、おもしろい。
「頭の悪さ」が人を惹きつける

 アイスバケツチャレンジが流行った理由はいろいろあるが、とにかくその単純な「バカバカしさ」がもっとも大きな要因だろう。真夏の炎天下に氷水を頭からかぶる。ビル・ゲイツやFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ、レディ・ガガなど、日本ではトヨタの豊田章男社長やソフトバンクの孫正義氏、AKB48プロデューサーの秋元康や浜崎あゆみなど、経済界や芸能界の大物たちが氷水をかぶりびしょ濡れになる。そのバカバカしさと言うか、頭の悪さがまさにバカ受けしたわけだが、この場合の「頭の悪さ」というのは、もちろん褒め言葉だ。

 実際、テレビのバラエティ業界では、「頭が悪い」というフレーズを褒め言葉として使う人たちがいる。天才ディレクター時代のテリー伊藤氏も、番組の企画会議などで優れたアイデアが出てきたときなど「頭、悪いね~(笑)」と言って喜んでいた。

 ちなみに、褒め言葉として「くだらない」という言葉を使う業界人もいる。以前、僕がストリート系ファッション誌のプロデュースをしていた頃、若い男子がピアスをすることが流行りかけた。90年代前半の頃で、まだまだ男子がピアスすることが珍しい時代だった。そこで、編集チーフに「男のピアス特集をやろう」と提案したら、そのチーフは一瞬、虚をつかれたように黙り込み、そして破顔で「くだらね~(笑)」と発言した。「その企画、最高っス」という意味だ。

 当時は男子がピアスすることはかなり珍しいことで、そうした男子を集めて特集をやるのは、かなりくだらなくて頭の悪い企画だったのだ。モデルをやっているような男子でもピアスしている人間はまだ少なく、まだ耳に穴を空けていない男子モデルを原宿のピアス店に連れて行って「初めてのピアス」を体験してもらうという企画もやった。おかげさまでその企画は大好評で、読者人気ランキング2位を獲得したこともある。