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「引きこもり」するオトナたち

島根で引きこもり交流会呼び掛けの余波
家族会が生まれ、県も支援体制構築へ

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第213回】 2014年9月11日
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 「地方に居場所をつくろう」という動きが、少しずつ広がりを見せている。

 「外へ出ようよ」と、周囲から迫られる。

 「じゃあ、どこへ行けばいいのか」

 そう当事者たちから、よく聞かれる。

 とくに地方へ行けば行くほど、周囲の目がきつくなる一方、これ以上傷つけられないよう安心できて、かつ自分が将来、社会につながっていける道筋の見えるような“受け皿”が、あまりない。

 一方、当事者のいる家族も、誰にも相談できずに悩みを抱えたまま、地域で孤立し、埋もれていく。

 5月13日、筆者は島根県松江市へ手弁当で出かけていって、引きこもり当事者・家族の交流会を呼びかけた。

 きっかけは、長年引きこもりがちだった1人の当事者の思いだった。

年収80万円で必死に生活
松江在住の当事者からSOS

 「ガス、水道を止められて、人とのつながりがない」「このまま1人死ぬことになるのではないか」

 昨年末、そんなメールが松江に住む当事者のAさんから届き、しばらくやりとりした。仕事を探すお金もないAさんは、たまに入ってくるパートによる70~80万円ほどの年収で、家賃と電気代を支払いながら必死に生活していた。

 半年ほど経って、岡山市と津山市に講演に行くことになった。せっかくなので、津山から列車で松江まで足を延ばして、Aさんに会おうと思った。

 Aさんに声をかけると、少し驚かれたが、孤独な本人は「地域の様々な状況の人たちと交流したい」と望んでいた。

 島根県には、引きこもり家族会で唯一の全国組織である「KHJ」加盟の家族会がなかった。

 また、県は今年3月、ひきこもり実態調査を独自に行っていたが、厚労省が進める「ひきこもり地域支援センター」などの設置も未定となっていて、支援策もまだ不十分に見えた。

 2人で話し合って、少人数でもいいから当事者家族会を呼びかけようということになり、Aさんが会場探しのために自転車で駆け回ってくれた。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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