課題を与えられたあと、「一呼吸おくこと」の効果

 このエピソードの最大のポイントは、マーティーに最初に与えられた任務が「自動車電話の開発」だったこと。もし、マーティーのチームがそのまま課題に取り組んでいたら、自動車電話だけつくって、プロジェクトはそこで終了だったはず。

 でも、マーティーには直感が働いた。「相手がどこにいてもかけられる電話があれば、自動車電話よりもずっと喜ばれるにちがいない」

 地球上の全人口の約3分の2にあたる約50億人もの人が携帯電話を使っている今の時代であれば普通の発想だが、1970年代前半においては途方もない発想だった。なんといっても、自動車電話をつくるという課題から、自動車そのものを取り除いてしまったのだから。

 今回の調査によると、マーティーのように一呼吸おいて与えられた課題に対して正しい問いを投げかけると、その仕事がほかの人々から重要だと評価される確率は3・13倍、複数の人々に影響を与える確率が4・12倍高まることがわかっている。

 次回は9月24日掲載予定です。


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