本欄でも何度か論じたが、確定給付の企業年金は、企業の経営的な必然性から考えて、縮小・廃止の方向に向かうのが妥当だ。

 そもそも事業会社は運用会社ではない。巨額の資産運用を行ない、企業年金の財政状態が企業価値を大きく左右することは株主にとって余計だ。経営者にとっても年金のリスクは制御の難しい(かつ専門外の)負担だし、運用リスクが負担にならないような条件で企業年金の制度を設計すると従業員にとって魅力的なものになりにくい。また、これまで特に日本の企業年金には、長期勤続を奨励し従業員と企業の関係を固定化させる役割があったが、近年、企業にとって人材の流動性がより重要になってきた。長期間勤続しないとメリットが得られない制度は従業員にとってアンフェアな面もある。

 しかし、確定給付の企業年金が縮小しても従業員の老後の生活に対する備えの必要性は減らない。そこで期待されるのが確定拠出年金だが、金融危機に伴い資産運用の環境が悪化したこともあって、確定拠出年金の加入者の多くが運用で損失を抱えるなど、「いい思い」をしている人が少ない。

 内外の株価の下落と円高で、運用商品によっては、1年前と比べて3割を超える損になっているものもある。運用会社は「長期で持てば大丈夫です」と言いたいので、TOPIX(東証株価指数)が年間で4割以上上がった2005年を含めた「過去5年のデータ」を見せたがる傾向があるが、この場合でも多くの商品のリターンが0%近辺にあって、満足のいく水準のものが少ないのが現状だ。