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「AIG巨額ボーナス問題」が物語る
金融危機解決への険しすぎる道のり

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第70回】 2009年3月24日
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 昨年9月以降、経営危機に陥っている世界最大の保険会社・米AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が、世論の批判を押しきる格好で、総額162億円にも上る賞与(ボーナス)を支給した(編集部注:直近では、支払い総額がさらにそれを上回っている可能性も報道され始めた)。

 AIGは、政府から1730億ドル(約17兆円)の公的支援を受けている。この支援がなければ、間違いなく破綻していた企業だ。その企業が、従業員にこれほど多額のボーナスを支払ったのである。

 ボーナスの原資は、同社に注入された「公的資金=税金の一部」が充当されていることは明らかだ。しかも、100万ドル(約9800万円)を越えるボーナスを受け取った同社の幹部は73人、最高額は640万ドル(6億3000万円)にも上るという。

 この金額を見ただけでも、納税者である一般庶民から顰蹙を買うのは、当然だろう。

 それに対して、オバマ大統領をはじめ有力議員は、激しい非難を浴びせている。共和党のグラスリー議員などは、バブル崩壊後の日本企業の経営者を例に出して、「AIG経営者には2つの道しかない。(日本人のように)辞任か自殺です」と述べて物議をかもしているケースもある。

 今後、議会で公聴会が開催され、同社幹部の責任追及が厳しさを増すことになるだろう。また、新法案によって、「彼らが受け取った巨額ボーナスに課税して、税金で回収しよう」という動きも具体化し始めた。

「巨額ボーナス問題」の背景にある
“ギャランティード・ボーナス”の実態

 公的資金で命脈を保っている企業が、それを原資にして、経営に失敗した関係者に巨額のボーナスを支払う──。通常、われわれの常識では考えられないことだ。米国では、いったい何故そんなことが起こり得るのか?

 実は、この問題には深層がある。元々AIGは、有力社員を雇用するとき、一定のボーナスを保証するスキームを採っていたという。ボーナスを保証しないと、有能と見られる人材を集めることが出来なかったからである。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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