1つめは、「課題解決の能力」です。受け身や指示待ちではなく、主体的にその能力を発揮できることです。それから2つめは、「クリエイティブな企画能力」です。例えば、東大の文系はかつて優秀な官僚を養成する大学だったわけですが、その官僚においても、いまやクリエイティブな能力が求められてきています。ただ指示されたことだけをやっている官僚は、もはや使いものになりませんから。そして最後の3つめは、「人間的な魅力」です。人を思いやる優しさや慈しみの心、また、新しいものや多様なものを受け入れることができる姿勢など、そうした人間としての度量や魅力を持ち合わせていく必要があります。 

 しかし、こうした3つの能力は、現状の入試制度ではほとんど問われることはありません。でも社会がグローバル化したいま、日本の経済成長を支える一人ひとりの生産性を上げるためにも、東大に限らず多くの大学で、こうした3つの能力を含む、総合的な能力を持った人材を育てることが重要です。だからこそ時代に合わせて入試のあり方を大きく変え、それぞれの大学が自分たちの強みを生かした多様な教育をしてほしい。そうすることで21世紀に通用する力強い人材を輩出してくれると思うのです。

センター試験廃止で何が変わるのか?

――では、入試制度改革、つまりセンター試験廃止について具体的に2つお聞きします。1つはその「実施スケジュール」についてです。いつ、現状のセンター試験を廃止し、新しい試験に移行していくのか、そのメドを教えてください。そしてもう1つは、「多様な教育の実現」についてです。新たな入試制度に切り替えたからと言って、本当に多様な教育の実現につながるのでしょうか。むしろ、評価軸が変わるだけで、皆が新しい評価軸に合わせようと突き進んでしまう。いわゆる受験勉強という価値観はなくならないのでは、という懸念もあります。それについてはどのようにお考えでしょうか。

下村 まず、実施スケジュールとしては、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年度からの段階的な実施を予定しています。現状のセンター試験を廃止し、新たな試験「達成度テスト(仮称)」に切り替えます。この達成度テストは、大きく「基礎テスト」「発展テスト」の2種類に分かれていますが、いずれも高校在学中の継続的な学力を測ることが目的です。

 ですので、センター試験のような一発勝負ではなく、高校在学中に複数回受験し、その結果を大学入試の学力判定に利用できる仕組みです。知識偏重の一点刻みの選抜とならないよう、試験結果はレベルごとの段階表示となります。この学力判定に加え、面接や論文、奉仕活動や課外活動などの実績評価も加わり、多面的に合否を判定することが、新たな入試制度の特徴です。

(出典: 教育再生実行会議「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言)」をもとに作成) センター試験に代わる新たな大学入試制度「達成度テスト(仮称)」。高校の教育現場で指導改善に活かす「基礎レベル」と、大学側が学力判定に活用する「発展レベル」の2つに分かれている

 ただし、この達成度テストが入試のすべてはありません。今回の入試制度改革にあたっては、達成度テストのほかにも、例えば国際バカロレア入試や推薦入試など、多様な入試を取り入れるよう各大学に推奨しています。1つのモノサシで学生を採るのではなく、いろんなモノサシ、つまり1つの大学のなかにいろんな入学試験があってもいい。その結果、大学に多様な人材が入ってくることになりますし、グローバル時代のいま、そうでないといけないと思います。