大企業の重役も
「チェンジ」している空間

「チェンジ」用の道具(メイクアイテム)はそれほど多くない。誰もが手に入れられるアイテムで、特殊メイク用ではない

 なるほど……うなずくまま、さらに尋ねていくと、「さまざまな人の変身願望を叶えている」というウワサどおり、女性が男性(いわゆる男装)になる場合もあり、若者が老人になる場合(いわゆる老けメイク)もあることが分かった。見た目の国籍変更さえも。

 池田さんが差し出す、顔出し許可済の顧客“アルバム”を見て驚いた。

 それぞれのページにBEFORE(変身前)・AFTER(変身後)の写真が1枚ずつ。

 体育会系の大学生男子が、キャバクラ嬢風に(かなりの美形)、どこにでもいそうな、少しふくよかな女性がハリウッド女優ばりの風貌に、あたかもギャンブル好きそうな男性が白髪の仙人に「チェンジ」していた。ビジネスマン風の中年男性が熟女に変身し、カメラ目線で妖艶な姿を晒(さら)すものもある。

目尻からおでこにかけてテープを貼り付け、目元のたるみや皺を消していく。編集長は目をつむり、メイクされるがままの状態だ

「サラリーマンとか、年齢の高い人もここに来るのですか?」

「多いですね。大企業の重役さんもいます。サラリーマンの方が、平日の昼にこっそり息抜きにいらっしゃることもありますよ」

 1日平均4人ほどが訪れて、男性から女性の「チェンジ」が全体の9割を占め、そのうちの半数が30歳以上という。また、5割以上が初めての「チェンジ(女装・男装)」経験者で、「リピーターも多い」とのこと。

 池田さんは、私たち取材者の好奇な質問に顔色を変えず、椅子に座った編集長に向き合って、プロの目になった。「チェンジ」の始まりだ。

 還暦近い体験者を、いったいどんな若者にチェンジさせるのか――“百聞は一見に如かず”の編集者魂で、編集長はトレードマークのメガネを外し、チェンジストに身を委ねていく。