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森信茂樹の目覚めよ!納税者

アベノミクスの正念場がやってきた
消費増税延期は国際投資家に「すき」を見せる

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第81回】 2014年10月29日
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突然アベノミクスの正念場がやってきた。女性大臣が2人辞任したからではない。アベノミクス第1の矢も第2の矢も「想定外」の事態が生じ、一方期待された第3の矢の一つである配偶者控除などの見直しは進んでいない。安倍政権の経済政策は袋小路に入りつつある。ここで消費税率引き上げの先延ばしを行えば、国際投資家に付け入るスキを与えてしまう。

袋小路に入る経済政策

 アベノミクス第1の矢である異次元金融緩和で想定されていたのは、金融緩和により円安が進み、円安になればなるほど輸出が伸びて株価が上がる、ということであった。しかし、円安が110円を超えようとすると経済界が悲鳴をあげてしまった。経済の空洞化により円安が輸出拡大につながらないという事情や、輸入物価が上がり個人消費の足を引っ張るという懸念からである。

 第2の矢は、機動的な財政政策で、公共事業の拡大により、経済を支えていく、消費税率8%引上げへのインパクトを緩和するというストーリーであった。しかし、公共事業は資材不足、労働者不足で一向に進捗しない。長年の公共事業抑制で、それを支えるヒトやモノがなくなるというっていたのである。

 第3の矢はどうか。最近では、成長戦略として、「女性の活用」と「地方創生」が上げられている。「女性の活用」については、女性が輝く社会を作ろうということで、企業における女性の幹部登用を義務づける動きもあり、企業側もそれにこたえようとしている。

女性の活用に直結する配偶者控除の見直し

 しかし多くの女性の、そしてわが国の家計の直面している喫緊の課題は、103万円、130万円の壁をどうするかという問題である。パート女性労働者の多くが100万円前後で就労調整しており、他の先進国では考えられないような状況をぶち破る政策こそが、女性労働力の活用に直結する。

 これらの壁の原因は、配偶者控除や年金制度という国の政策にあるので、それへの対応を考えるというのが、「政府のできる」成長戦略であるはずだ。

 しかし、経済財政諮問会議も政府税制調査会も、この問題を、真剣な議論なしに早々と来年以降に先送りしてしまった。

 配偶者控除については、筆者は第68回「女性が輝く社会にふさわしい税制とは 配偶者控除を「家族控除」に衣替えする」やシリーズ・日本のアジェンダ「配偶者控除見直しの是非を考える」第3回などで具体案を提言してきた。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

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