突然アベノミクスの正念場がやってきた。女性大臣が2人辞任したからではない。アベノミクス第1の矢も第2の矢も「想定外」の事態が生じ、一方期待された第3の矢の一つである配偶者控除などの見直しは進んでいない。安倍政権の経済政策は袋小路に入りつつある。ここで消費税率引き上げの先延ばしを行えば、国際投資家に付け入るスキを与えてしまう。
袋小路に入る経済政策
アベノミクス第1の矢である異次元金融緩和で想定されていたのは、金融緩和により円安が進み、円安になればなるほど輸出が伸びて株価が上がる、ということであった。しかし、円安が110円を超えようとすると経済界が悲鳴をあげてしまった。経済の空洞化により円安が輸出拡大につながらないという事情や、輸入物価が上がり個人消費の足を引っ張るという懸念からである。
第2の矢は、機動的な財政政策で、公共事業の拡大により、経済を支えていく、消費税率8%引上げへのインパクトを緩和するというストーリーであった。しかし、公共事業は資材不足、労働者不足で一向に進捗しない。長年の公共事業抑制で、それを支えるヒトやモノがなくなるというっていたのである。
第3の矢はどうか。最近では、成長戦略として、「女性の活用」と「地方創生」が上げられている。「女性の活用」については、女性が輝く社会を作ろうということで、企業における女性の幹部登用を義務づける動きもあり、企業側もそれにこたえようとしている。
女性の活用に直結する配偶者控除の見直し
しかし多くの女性の、そしてわが国の家計の直面している喫緊の課題は、103万円、130万円の壁をどうするかという問題である。パート女性労働者の多くが100万円前後で就労調整しており、他の先進国では考えられないような状況をぶち破る政策こそが、女性労働力の活用に直結する。
これらの壁の原因は、配偶者控除や年金制度という国の政策にあるので、それへの対応を考えるというのが、「政府のできる」成長戦略であるはずだ。
しかし、経済財政諮問会議も政府税制調査会も、この問題を、真剣な議論なしに早々と来年以降に先送りしてしまった。
配偶者控除については、筆者は第68回「女性が輝く社会にふさわしい税制とは 配偶者控除を「家族控除」に衣替えする」やシリーズ・日本のアジェンダ「配偶者控除見直しの是非を考える」第3回などで具体案を提言してきた。