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ついに「睫毛貧毛症」に治療薬
自由診療で1万~数万円

井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-
【第223回】

 女子中・高校生の父親なら、彼女たちの目元の作り込みにかける情熱をご承知と思う。アイライナーにアイラッシュ(つけ睫毛)、プチ整形と行動はエスカレートするばかり。日本で未承認の“睫毛の育毛剤”を個人輸入するケースも少なくなかった。

 さて今年9月末日、情報に敏感な女性たちが待ち望んでいた“睫毛の育毛剤”が日本でも発売されることになった。一般名は「ビマトプラスト(商品名・グラッシュビスタ)」である。

 この薬、もともと緑内障治療用の点眼薬として開発が進んでいたが、点眼中に「まぶたの多毛症」「睫毛が長く、太くなる」という副作用が生じることに開発者が着目。方向を転じて“睫毛の育毛剤”としての用途を追求したわけ。毛根を包む組織に作用して、毛が成長する「成長期」を延ばして睫毛を太く長くする効果がある。ただし、毛包がない場所の「発毛」効果は期待できない。

 適応は「睫毛貧毛症」と初耳の診断名がついているが、何をもって「貧毛」と診断するかは不明である。患者個人の主観というところだろう。自由診療だが、皮膚科など医師の処方せんは必要。費用は診察、処方せん代、薬剤費を含め1万~数万円かかる。副作用は結膜の充血や目やに、など。また、周囲も増毛する可能性があるので、まぶたに付着した場合は速やかに拭き取る、などの注意がついている。ちなみに、緑内障治療用点眼薬はすでに承認済み。有効成分や含有量も同じだが、こちらは保険適用がある。緑内障治療中の中高年なら安上がりに「ついでに美しく」というわけ。

 さて、この「睫毛貧毛症」治療薬、美容目的の使用が主流になるだろうが、実際に手にしてほしいのは、アトピー性皮膚炎や乾癬など自己免疫疾患、感染症、そのほか強い薬の副作用で睫毛が脱毛してしまった方だ。日本ではいまだに「見た目をうんぬんするなんて」という建前論が根強いが、セルフイメージを回復することは心身の健康と何より大本の疾患に立ち向かう勇気に直結する。せっかく手段ができたのだ。ぜひ、主治医に相談してほしい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 

週刊ダイヤモンド編集部


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