11月21日、安倍首相が衆議院を解散し、12月2日公示、14日の投開票が決まった。首相自ら名付けて「アベノミクス解散」。安倍首相の進める経済政策であるアベノミクズについて、国民の「信」を問うというわけだ。
だが、ちょっと待ってほしい。国民から見れば、「650億円もの費用をかけて、何のために選挙するのか分からない」というのが、率直な感想だろう。早くも争点ぼけで、投票率は非常に低くなるのではないかと予想されている。もし、投票率が50%を切るようなことがあったら、それで国民の審判を仰いだと言えるのだろうか。
消費増税先送りに反対政党なし
何が争点が不明確な総選挙
解散に先立つ18日には、首相は2015年10月予定されていた消費増税を1年半先送りすると表明。これが衆議院総選挙の争点となるとの考えを示した。そもそも消費増税の先送りに反対する政党は存在しない。ということは、消費増税の先送りは総選挙の「争点」とはならないことを意味する。だから、首相は消費増税の先送りではなく、アベノミクスに対する信認を選挙の争点に据えたのだろうか。
しかもである。現在の与党である自民・公明両党は合計で326議席を保有していた。参議院で法案が否決されても、衆議院で3分の2以上の賛成で再可決すれば、法案を成立させることができる。自公両党合わせれば、この3分の2を超えているのだ。消費増税先送りには法改正が必要だが、それはたやすいことだ。だから、一層、国民にとっては、今回の解散・総選挙の意味が分からなくなる。
来年になれば、集団的自衛権行使の裏付けとなる法律の改正や、原発の再稼働に代表されるエネルギー問題など国民の意見が大きく割れることが予想される課題が山積している。また、与党内にも消費増税派も存在している。
だから、アベノミクスの帰趨もはっきりせず支持率の高いうちに、選挙に打って出る。ここで勝利すれば、消費増税派も一掃し党内基盤も盤石になるうえ、消費増税の急先鋒あった財務省を始めとする霞が関(官僚)も押さえこめる。そして次の4年間で、宿願である憲法改正への道筋をつける、これが首相の本当の狙いだ。こうした解説が説得力をもって聞こえてしまう。