アベノミクスを「評価しない」派も多い
実質賃金マイナスで選挙に勝てるのか?

 安倍首相が「アベノミクス解散」を発表し、投票日は12月14日だが、事実上の選挙戦がスタートした。争点が経済政策であることは間違いないのだが、この点で気になる世論調査データがあった。

 日本経済新聞とテレビ東京によるものだが(11月21日~23日に実施。記事は『日本経済新聞』11月24日朝刊)、アベノミクスについて「評価しない」が51%で、「評価する」の33%を上回っているという。

 雇用は改善したし、株価も上がった。アベノミクスは評価されていて当然だと安倍首相は思っているだろう。仮に、筆者が調査のサンプルに選ばれていたなら、「評価する」と答えたであろう。

 しかし、考えてみると、金融緩和による物価の上昇に加えて、消費税率が5%から8%に引き上げられており、多くの勤労者の賃金の伸びはこれらの合計に追いついていない。多数の有権者の実質所得が低下しているときに選挙に持ち込んで、果たして与党が勝てるものなのだろうか。

 自民党が予想外に大きく議席を減らすことがあるとすれば、この問題を過小評価して解散を決めたことに原因が求められるかもしれない。「アベノミクスに対する信認が揺らいだ」と評価されるような結果が出た場合、経済政策が再び混乱するリスクがある。現段階でその確率が大きいとは思わないが、経済的には気にしておくべき「下方リスク」の1つだ。

 いわゆるタラ・レバの議論になるが、4月の消費税率引き上げを見送った上での総選挙であれば、こうした心配はなかった。しかし、官僚集団と安倍政権との力関係から考えて、これは無理だったのだろう。

 現時点で選挙は公示されていないから、予想を述べることが許されよう。総選挙に関して筆者は、安倍政権に対する批判と、まだ有権者の記憶に残る民主党政権の不出来とがお互いに引っ張り合うが、野党の選挙準備が不十分であるぶん、与党が優勢だと考えている。