取り返しがつかない安倍首相の誤算

 12月2日、衆議院総選挙が公示され、日本列島全体が14日の投票日に向けて走り出した。

 だが、組織政党は別として、野党では選挙直前の大会や出陣式の集まりが悪くて盛り上がりに欠けているようだ。

 私の目や耳に入る事前の調査では、例外なく大多数の選挙区で自民候補が強く、今のところ自民党の圧勝に終わると予想されている。

 そこに水をかけたのが、11月28日、29日に実施された共同通信社の内閣支持率調査の結果である。

 なんと、内閣支持率は43.6%、不支持率は47.3%で、安倍晋三内閣の支持率は2年前の発足以来、初めて不支持が支持を上回ったのである。

 また、前回調査(19日、20日)からほぼ10日の短期間に、支持率は3.8%も下落し、不支持率は3.2%も上昇したのだ。この傾向が投票日までに劇的に変わる要因はなさそうだが、自民党はこれを覆す有力な戦略を持ち合わせているのだろうか。

 既に本欄で指摘してきたが、安倍首相の解散戦略は「好調なアベノミクス」を絶対の前提としている。

 しかし、11月17日発表の7~9月のGDP速報値(年率換算マイナス1.6%)でこの戦略はあっけなく崩れ去った。

 その改定値は、12月初旬、投票日前に発表される予定だが、もしもマイナス1.6%よりもっと悪い数字が出たら安倍戦略は一気に瓦解することにもなりかねない。

 残る手立てと言えば、首相が良い数字を大声で叫び、悪い数字にはあえて触れないことしかないだろう。しかし、万一そんなことをすれば逆の効果を招くだろう。

 また、仮に、アベノミクスが好調であったとしても、それが必然的に経済格差を拡大する政策であることを多くの人が既に気づいてしまっている。首相が一転してアベノミクスの大転換に踏み切る事しか他に道がないように思われる。