長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第6回】 2014年9月11日 樋口直哉 [小説家・料理人]

ガンジーの菜食主義に見る必要最低限の食生活

 菜食主義者には健康なイメージがある。ホントのところ、そうした主義の人のほうが長生きできるのだろうか。この疑問に答えるのはなかなかに難しい。

 一般的に先進国の菜食主義者は体形もすっきりして、心臓発作に見舞われる率も少ない、とされている。ところがそうした人たちは総じて健康的な生活を送る傾向にあり、普通以上に運動もするので、一概に食事による影響と言い切ることができないのである。

※享年(数え年で表記)
イラスト/びごーじょうじ

 菜食主義者として有名な人物に、マハトマ・ガンジーがいる。本名はモーハンダース・カラムチャンド・ガンジー。マハートマーとは「偉大なる魂」という意味で、ノーベル文学賞も受賞したインドの詩人タゴールから贈られた尊称である。

 非暴力を掲げインド独立の精神的な指導者となった彼は1948年、宗教的対立を収めようと断食により訴えっていたところを、ヒンズー教の原理主義者によって暗殺される。没年は78歳。天寿を全うしたとはいえないかもしれないが、濃密な人生を過ごした思想家としては長命といっていい。

 ガンジーは「食事は必要最低限であるべき」と考え、簡素な生活を求めた。彼自身の筆による『ガンジー自伝』の前半は肉食をめぐる葛藤に多くのページが割かれている。若い頃、実験と称して肉を食べたが(その夜はお腹のなかで山羊がメェ~メェ~と鳴いたらしい)、結局母親に隠し事をしている罪悪感に耐え切れず、以後肉食をすることはなかったこと。また、英国に渡った彼の心配事が食事であり、また、かの地での料理が口に合わなかったことなどが綴られている。食は彼にとって人生の大問題だったのだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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