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これからの日本ブランドの30年にむけて

ブランドは流動化し、生命体へ――「ブランディング3.0」時代に向けた日本ブランド変革の本質

和田千弘
【第10回・最終回】 2014年12月19日
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ブランディングとイノベーションが変化した時

 やや個人的な経験からお話をしたい。

 2000年、私はMIT(マサチューセッツ工科大学)のMBA課程に在籍していた。当時、日本企業は一部の自動車メーカー以外、凋落が著しい時期であったが、創業間もないグーグルが急速に利用者を拡大し、復帰したジョブズが開発した斬新なデザインのiMacが発売され、MITのオフィスでも広く使われるといった印象的な出来事が起きていた。企業経営者からは、「デザインシンキング」の重要性が頻繁に語られ始めていた。

 理論的にも、B.J.パインとJ.H.ギルモアによる「経験経済」やクレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」の経営的意味合いがビジネススクールでも議論されていた。MITでも、エリック・フォン・ヒッペルがオープンソースソフトウェアやオープンデザインを研究し、「イノベーションの民主化」を提唱していた。

 そうした観察から、その時期はマーケティングやイノベーションの考え方の変曲点の一つとなる時期なのではないか…と強く感じていたのだが、その時期まさに、2000年、インターブランドの「ベスト・グローバル・ブランド」ランキングが作成・公開されている。ファイナンス理論を駆使しながら、膨大なデータを分析し、情緒的ベネフィットやユーザーのブランド選択行動を数値に転換するブランドの捉え方に、私自身、強い衝撃を受けた。

 実際、ちょうどその頃から、あらゆる市場で、ブランドの捉え方が大きく変化している。広告によって形成される短期的イメージではなく、創造・蓄積・管理されるべき無形資産であり、企業のあらゆる具体的活動がブランドにつながるという考え方が浸透し始めている。

 ダニエル・ピンクの「ハイコンセプト」は、この時期以降のユーザーの変化をうまく分析している。ピンクが分析したように、1)機能だけでなく「デザイン」、2)議論よりは「物語」、3)個別よりも「全体の調和」、4)論理だけではなく「共感」、5)まじめだけでなく「遊び心」、6)モノよりも「生きがい」、といった情緒的経験の価値の重要性は高まり続けている。そうした、ユーザーの期待値の不連続なレベルでの高まりは、ブランディング活動の重要性を高め続けてきた。

 しかし、現在、それに留まらない大きな変化がある。

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インターブランドは、1974年、ロンドンで設立された世界最大のブランドコンサルティング会社。世界27 カ国、約40 のオフィスを拠点に、グローバルでブランドの価値を創り、高め続ける支援を行っている。インターブランドの「ブランド価値評価」は、ISO により世界で最初にブランドの金銭的価値測定における世界標準として認められ、グローバルのブランドランキングである“Best Global Brands”などのレポートを広く公表している。
 インターブランドジャパンは、ロンドン、ニューヨークに次ぐインターブランド第3の拠点として、1983年、東京に設立された。ブランド戦略構築をリードするコンサルタント、ブランドのネーミング、スローガン、メッセージング、ロゴ・パッケージ・空間・デジタルのデザインを開発するクリエイターが在籍し、さまざまな企業・団体に対して、トータルにブランディングサービスを提供している。著書に「ブランディング7つの原則」(日本経済新聞出版社刊)。


これからの日本ブランドの30年にむけて

 日本経済は世界第3位の規模を誇るものの、「グローバル」における「日本ブランド」のプレゼンスはその経済規模に見合ったものになっているとは言い難い。世界と伍して戦える“強いグローバルブランド”の存在なくして、少子高齢化が加速するこの国の未来はない。
 2020年の夏季五輪大会の東京招致成功は、日本全体が長期的な視点で物事を考え、改革を進める機運をもたらした。私たちはこの機会を逃すことなく、2020年を通過点と捉え、さらにその先を見据えた日本企業のブランドの姿を考えなければならい。
 インターブランドジャパンは設立30年を契機とし、これからの日本の“30年”にむけ、 “強いグローバルブランド”確立のために、「日本ブランド」が今取り組まなければならないことは何か、長期的な視点から、多面的な提言を行う。
 

「これからの日本ブランドの30年にむけて」

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