安全やダイヤ厳守などにばかり目を向けがちな鉄道会社。しかし、それでは旅客数を積極的に増やすことは難しい。営業やマーケティングのマインドを取り入れ、定期外旅客数を増やした西武鉄道は、トップ自らの積極性がいい循環を産み出し、組織の体質を変えることに成功した。

苦手なマーケティングに注力
定期外旅客数増加の秘密

 組織に属する者は、自然と「その組織が大切にすべきこと」を共有する。インフラの企業であれば「安全」や「(出発・到着の)時間厳守」だろう。そして、これを変えることや、新たな一項目を付け加えることは、意外と非常に難しい。しかし、そんな“常識”を覆し、営業マインドを取り入れることに成功したのが、西武鉄道だ。

ビアトレインや「妖怪ウォッチ」スタンプラリーなど、鉄道会社が苦手としてきたマーケティング活動に力を入れた

 鉄道会社には「定期外旅客数」という経営指標がある。読んで字のごとく、定期券を使わない旅客の数だ。西武鉄道では2011年度から13年度にかけ、約620万人も増加している。運賃を1人200円で計算すれば約12億円以上もの増収だ。

 ちなみに、定期外旅客数は景気の動向や沿線開発の影響も受ける。たとえば羽田空港の発着枠が増えれば京浜急行の定期外旅客数は一気に伸びる。だが、西武沿線に劇的な変化はなかった。では、なぜ同社の定期外旅客数は伸びたのか。

 その要因は、マネジメントにあった。鉄道本部運輸部スマイル&スマイル室長の石橋憲司氏が話す。

「以前より、定期外旅客数の増加を考える『スマイル&スマイル部』がありました。そして近年、これに注力をしているのです」