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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

周永康を守れなかった江沢民と
令計画を守らなかった胡錦濤

加藤嘉一
【第42回】 2015年1月13日
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  2014年9月30日18時。北京・人民大会堂宴会庁。

 国務院主催(司会:李克強国務院総理)の建国65周年を祝う国慶節レセプションに出席する国家指導者たちがバックミュージックとともに姿を現した。

 先頭を歩くのは習近平国家主席。その後ろには、自力でまともに歩くことがままならないためか、男性スタッフに腰の位置を支えられながら登場した江沢民元国家主席。そして、胡錦濤前国家主席が続いた。

 習主席の右手に江元主席が、左手に胡前主席が腰を下ろした。乾杯の音頭の際には、赤ワインが注がれたグラスを両手で丁寧に持ちあげた習主席がまずは江元主席に、続いて胡前主席に捧げ、前任者に敬意を表した。右手のみでワイングラスを持っている江沢民・胡錦濤両氏は、笑顔で習近平に応えた。

 宴席には、2007年10月~2012年11月における第十七届中央政治局常務委員たち(前述の習近平、胡錦濤、李克強以外に、呉邦国、温家宝、賈慶林、李長春、賀国強)の姿もあった。ただ一人、約2ヵ月前の7月29日に“落馬”(政治家や役人、国有企業の幹部などが、汚職や収賄といったスキャンダルが原因で職を解かれ、かつ中央規律検査委員会による調査を受けること―筆者注)した周永康元中央政法委員会書記の姿はなかった。

年末に起こった中国共産党
政治史に残る2つの事件

 そんな現場を、中国で役人を輩出することで有名な江蘇省出身の同郷で、共産党内で自ら周永康氏(江蘇省無錫出身)の地位を引き上げてきた江沢民氏(江蘇省揚州出身)は、どんな心境で眺めていたのだろうか。

 「江沢民は側近である周永康を守るために策を練り、実際に習近平や王岐山に対して圧力をかけようとしたが、効かなかったようだ。習近平の意思は硬く、王岐山も党内各方面からの圧力を受けながらも断固たる態度で反腐敗闘争に挑んでいる。どこの勢力にメスを入れ、誰を失脚させるのかに関して、習近平は自ら意思を決定し、権力を行使できる立場になっている。原則、誰も異義を唱えることはできない」

 12月中旬、習氏に近い共産党関係者が北京で私にこう証言した。“原則”とした背景には、中国の政治には常に不確定要素や不測の事態が付きもので、いつ、どこで何が起こるか分からないという潜在意識が横たわっているのだろう。

 この関係者のコメントを裏付ける、中国共産党政治史に残る事件が12月の上旬と下旬にそれぞれ発生している。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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