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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

世代間対立問題の本丸は「日本型雇用慣行」

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第97回】 2015年1月15日
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 安倍普三首相が、衆院総選挙で争点となった「アベノミクス」以外の、憲法改正や集団的自衛権を含む安全保障法制の整備、原発再稼働など首相の「やりたい政策」についても、「信任を得た」と繰り返し言うようになった。首相は総選挙大勝を契機に「やりたい政策」を公然と推進する姿勢に転じたようだ(第96回を参照のこと)。だが、首相のやり方は、あまり上手ではないように思う。

 首相が「信任を得た」と言い続けるのはよくないと思うのだ。政界は「一寸先は闇」である。不測の事態が起こって内閣支持率が急落した時、野党や党内の「ポスト安倍」を密かに狙う自民党議員が「信任がなくなったんだから代われ」と言える、付け入る隙を与えてしまうことにならないだろうか。

 むしろ、首相が「支持率がゼロになろうと、政治生命をかけて不退転でやる!」と開き直るほうが、政敵にとって厄介なのだ。例えば、野田佳彦前首相が「政治生命をかけて消費増税を実現する」と宣言した時だ。

 野田政権の支持率は低迷し、野党の解散要求が強まり、小沢一郎グループが離党したが、野田首相(当時)を辞めさせることはなかなかできなかった。首相にとっては、支持率後退も激しい反対抵も織り込み済みだから、それで動揺することはなかったからだ。結局、野田首相は三党合意によって消費増税を実現した。逆に、野田首相を解散に追い詰められなかった谷垣禎一自民党総裁(当時)は苦境に陥り、党総裁選で再選できなかった。

 さらに反対派にとって手に負えなかったのが、菅直人元首相だろう。与野党双方からの「辞めろ」の大合唱で四面楚歌になりながら、中部電力浜岡原発をほぼ独断で停止し、首相の座に居座った(第16回を参照のこと)。菅首相(当時)を辞めさせるために、膨大な政治的エネルギーを必要とし、これも谷垣総裁が引きずり降ろされる遠因となった。

 安倍首相が「やりたい政策」を実現したいなら、「信任を得た」と強調するよりも、「信任を得ようが得まいが、自分は信念を貫いて政策を実現する」と開き直ったほうがいいように思う。首相は「信任」と言い張ることで、一寸先は闇である政界の事態の変化に柔軟に対応する「余裕」を、自らなくしているように思う。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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