タイヤ国内2位の住友ゴム工業。主要国で「ダンロップ」ブランドを擁し、世界でも5位に位置するタイヤメーカーだ。そんな同社が今、ブランド戦略の軌道修正を迫られている。背景には、世界3位の米グッドイヤーとの提携解消交渉がある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)
「ファルケンブランドをもっと強化していかなければならないという意識が、非常に高まった」
2014年12月18日、住友ゴム工業の池田育嗣社長は年末会見の席上、こう心境を述べた。
「ダンロップ」ブランドで知られる住友ゴムは、売上高約7800億円、世界5位(シェア約4%)のタイヤメーカーだ。
一方、ダンロップに比べて知名度で劣る「ファルケン」といえば、もともと国内メーカーの旧オーツタイヤが展開していたブランド名。03年に住友ゴムがオーツタイヤを吸収合併し、今は住友ゴムのブランドの一つになっている。
世界でも競争力のあるダンロップというブランドを持つにもかかわらず、このファルケンのブランド価値を今後、全世界で高めていく必要がある、というのだ。
そう意識し始めたきっかけは、資本・業務提携先の世界3位のタイヤメーカー、米グッドイヤーとの提携解消交渉にある。
「青天のへきれきだった」(池田社長)。14年2月、グッドイヤーは住友ゴムに対して突如、提携の解消を申し入れ、国際商業会議所に提携解消に向けた仲裁を申し立てた。その理由としてグッドイヤーは、住友ゴムの反競争的な行為を挙げている。確かに、1999年の提携から15年がたち、当初目指した日米欧での協業よりも、「新興国では競合の色合いが濃くなってきた」(池田社長)。グッドイヤーにとっては、提携の魅力が薄れつつあったのだろう。
しかし問題は、欧米市場でグッドイヤーがダンロップ事業の主導権を握っていること。両社はこれまで日本では住友ゴムが75%、欧米ではグッドイヤーが75%出資する合弁会社を設立し、「ダンロップ」「グッドイヤー」などのブランドでビジネスを展開してきた。