最近、わが国や米国、さらには欧州諸国においても、「当初の予想よりも早い時期に景気が回復する」との期待が盛り上っている。

 その背景には、中国など新興国の経済が回復基調を鮮明化していることに加え、わが国やドイツ、フランスなどの今年4-6月期のGDPがプラスに転じ、米国の生産活動に回復の兆候が見え始めていることがある。

 気の早い経済専門家には、「今年後半、世界経済は本格的な回復過程に戻る」と見ている人も少なくない。

 ただし、現在の経済状況には、無視できないことがある。それは、世界的に失業率が上昇傾向を辿っていることだ。

 企業が過剰な従業員を整理し、それが収益状況の回復につながっているのだが、一方では、それが失業率の上昇となって表面化している。いわば、「雇用なき景気回復」(ジョブレス・リカバリー)という現象である。

 これと同じ現象は、1990年代の米国でも起きた。景気悪化に伴い、企業は過剰人員の負担に耐えられず、人員の整理を積極化することでコスト削減を図り、収益力を回復させた。それが本格的な景気回復につながり、米国経済は上昇過程へ戻ることができた。

 だが、リーマンショック以降の景気悪化は、「90年代のケースよりもかなり深刻」と考えた方がよいだろう。それは、今回のケースが、「米国の借金に基づく過剰消費」という、構造的な問題に起因しているからだ。

 米国の過剰消費が続くことを前提にして、多くの企業は生産能力を増強した。ところが、サブプライム問題とそれに続くリーマンショックによって、水膨れした需要が一気に収縮した。

 米国の需要が減ったのだから、多くの企業は過剰設備・過剰人員を抱えることになる。そのため、ほとんどの国で失業率が上昇しているのである。

 一方、主要国は景気の悪化を放っておけないため、積極的に財政を出動して、減少した需要を埋め合わせる努力をしている。その努力のお陰で、景気が少し上向きになり始めていると考えるとわかり易い。