部下指導の強力な武器「アウトプットイメージ作成アプローチ」

 あなたが上司で、部下に書類・資料作成を指示するとき、非常に生産性の高い方法がある。最初にアウトプットイメージ(業務完了時にどういうイメージになるかを示したもの)をできる限り詳細に書き示すことだ。慣れれば30分程度でアウトプットイメージを書いて部下とすり合わせをし、部下に作業を担当してもらうことができる。そうすると仕事がブレなく最速で進む。アウトプットの質も上がる。

・上司と部下の差を理解する
 部下は、上司が何を求めているかよくわからないことが多い。こちらは伝えたつもりでも、経験も理解力も違うので、伝えた内容が正確に伝わりづらい。部下の持つ情報量は上司と比べて数分の一以下であることも普通だ。口頭だとどんなに時間をかけても、説明した時点で理解に差が生まれることになる。その意味で、「こういう資料をつくってほしい。わかった?」「はい、わかりました」というのが一番まずい。

 口頭だと、最初の理解にギャップがあるだけではなく、言ったほうも言われたほうも、時間がたつにつれ記憶が曖昧になる。自分に都合のいいことしか覚えていない。「絶対こう言った」「こう聞いた」と信じ込んでいても、途中でずれていってしまうことがよく起きる。結果として、上司は有効なサポートができず、期待した成果を実現できないばかりか、部下にとって過度のストレス、オーバーワークを生じさせる。

・具体的なステップ
「アウトプットイメージ作成アプローチ」は、こうした上司と部下の情報量の差、力の差、上司の指示の曖昧さなどに対して劇的な効果がある。

 もともとは、私がマッキンゼー時代に韓国で一人で7~10のプロジェクトを同時並行的に担当した際に、やむにやまれずクライアントのチームメンバーに対して実行したものだ。「コロンブスの卵」的に発見し、確立した。成長途上の担当者を育てつつ、過度のプレッシャーを与えず、かつアウトプットの質は妥協しない。ユニークではあるが、これまでに多種多様な状況で実施し、どんなシーンでも大変有効であることが実証されている。そのポイントをまとめると次のようになる。

 ◎部下に仕事を指示する際、最初に完了時のアウトプットイメージを極力詳細に書いて示す
 ◎業務が企画書、報告書等の資料作成の場合は、全体の目次、ページ数、ページ配分を決め、各ページにタイトルを書き、ページ番号をふる
 ◎慣れてくれば、部下の目前でこのアウトプットイメージを作成して、合意し、仕事に取り組み始めてもらう
 ◎最終ゴールを最初に明示し、到達するまでの期間中に極めて頻繁な進捗確認ミーティング(2週間であれば、7~10回程度)をすることにより、過度なストレス・プレッシャーもなくスピーディーにゴールに到達することができる
 ◎進捗確認ミーティングのつど、作成中の資料の全体を部下にコピーしてもらい、新しく仕上がったページについて説明を受けると、上司としては進捗やこれまでの経緯を確認しやすい
 ◎進捗確認ミーティング時に不足した部分を上司が補う(下図の矢印の部分)
 ◎頻度が多ければ、一回の進捗確認ミーティングの時間は10~15分でも十分で、ほとんど手間がかからない。しかもアウトプットは急激に改善される。

資料作成は「アウトプットイメージ作成アプローチ」で