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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

うつ社員の肩代わりで疲弊する同僚たちの悲鳴(下)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第2回】 2015年2月10日
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>>「うつ社員の肩代わりで疲弊する同僚たちの悲鳴」(上)から続きます。

 ここからは、私が感じ取っていることだ。うつで苦しむ男性に文句を言っている同僚たちは、本心では、「自分たちよりも先に彼が副編集長になるのではないか」という懸念を抱いているのではなかろうか。同僚たちは、男性が職場復帰したことに不満を持っているのではないのかもしれない。会社として、自分たちへの配慮が足りないことに怒っているように思える。このあたりは、うつなどを抱え込む社員について論じるとき、盲点となりがちなところだ。

 少なくとも同僚たちは、善意で男性の仕事を請け負ってきたと思っている。たとえば、1人の同僚のこの言葉が象徴的だ。

 「残業が大量に増え、人事部や上司から叱責を受けた。時間に押され、自らの仕事にも、問題が次々と生じた」

 広い視野に立って考えてみると、同僚たちにとっては、男性が休業していた時期もそれ以前も、彼の仕事のフォローが相当な負担になっていたことは事実なのだ。現在も、男性が元のペースで仕事が消化できていないようで、そのことにも不満がある。

 本来は、同僚たちのこのような一連の行為に報いるために、会社は何らかの見返りを与えないといけない。それがないまま、「みんなで支え合おう」という美しい言葉を、つまりはタテマエを持ち出したところで、彼らの心は満たされない。「みんなで支え合おう」と口にするほどに、反発心が強くなっていくように、筆者には見える。ここにこそ、「本当の弱者」がいるのではないか。

タテマエとホンネが屈折した
形で絡み合う「黒い職場」

 後日談を語ると、この編集部を取り巻く事態は、さらに深刻化する。去年の秋に人事異動があり、ある珍事が起きた。この会社が数年前に吸収合併した、ある中堅出版社に在籍していた女性編集者が、新たな編集長に就任したのだ。

 女性編集者は、40代前半。中堅の出版社ではさしたる実績はないようだが、年齢から見ると抜擢人事である。だが、マスメディアが好きそうな「実力主義」なるものではない、と私は見ている。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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