米国のオバマ大統領は、黒人で初めての大統領であるだけでも歴史に深く刻まれる。だが、政治的業績となるとなかなかすぐには思い浮ばない。
任期末が近づく今、ひょっとすると米国の日本取り込みがオバマ大統領の歴史的業績になるかもしれない。それも、米国が日本を従属国化しようとしているというより、日本が進んで米国に従属しようとしている印象を受ける。
これは米国のいかなる政権も、民主党、共和党などの政党も、さらにほとんどの米国民も大歓迎することは間違いない。
現実には、米国の軍事行動のために人命と資金の役割分担を引き受けるところから、両国の一体化が始まる。これが、末期のオバマ政権に転がり込んだ思わぬ歴史的事業になりそうだ。
20年ほど前に、既に故人となった著名な政治学者が私に「結局日本はアラスカやハワイのようになるのだろうな」とつぶやいたことがある。以来、この言葉が私の頭から離れたことはない。アラスカやハワイが州となるのは、言語や文化を考えても違和感はなかった。しかし、異質な文化や伝統を持って、有史以来、独立を貫いてきた日本がどうしてそんなことになるのか。だが、現状はその学者の言った方向に向かっていないとは断定できない。“州”となることはないだろうが、自分で国の方向を決めるという独立国の一義的な特質を喪失する可能性は高い。
安倍晋三首相は、5月の連休に訪米してオバマ大統領と会談する予定となっている。それまでに、安保関連法の整備、ガイドライン(日米防衛協力の指針)の決定という宿題を片付けなければならない。統一地方選挙後に集中的に取り組み、それをおみやげに訪米するつもりだろう。
日本が米国の仕掛けた戦争に
見境なく加担するのは誰のためにもならない
安倍首相は、今回の「イスラム国」問題が日米一体化の流れを加速させると考えているのだろうか。国会審議でも一段と強硬姿勢になったようだ。
この日本の動きに呼応するかのように、6日、オバマ政権は5年ぶりに国家安全保障戦略を発表した。今後の外交政策、軍事政策の基本方針である。この新戦略のキーワードは、「同盟国との連携重視」、「アジア重視」だが、この2つが揃えば、新戦略は日本の役割に過大な期待があると言わざるを得ない。