経営 × オフィス

ジョブズも実践した
職場の閉塞感を改善する方法

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第19回】 2015年2月18日
1
nextpage

カントも実践していた散歩での思索
脳科学者も「創造性を高める」と指摘

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 今日は、そんなダークサイドの話題というよりは、ブライトサイドの話を提供したい。

 筆者が米国の大学院に留学中のことだ。指導教員のもとに研究の相談にいくと、決まって「ちょっとお茶でもしながら話そう」と散歩に連れていかれた。その先生は、筆者の話を聞きながら、近くではなく、歩いて10分くらいかかるカフェに行き、そこで小1時間ほどディスカッションをするのが常だった。

 筆者の留学先はロサンゼルスだったため、大抵はさわやかな風の中、眩しい太陽の下で、のんびりと歩きながら、彼は筆者の話を熱心に聞いてくれ、カフェに座りお茶が運ばれてくるころには、何かしら有効な助言をしてくれた。

 彼は、いつも「こういうときは、歩きながらのほうがいいアイディアが浮かぶんだよ」といって笑っていたのだが、彼自身、研究室でも常に歩き回って考え事をしている人だった。

 哲学者のエマヌエル・カントが、毎日決まった午後の時間に、決まったルートを散歩していたのは有名な話だ。その時間があまりに正確なので、人々は散歩しているカントをみて時計を合わせたというくらいだ。

 その散歩の時間は、午前中のデスクワークに引き続いての思索の時間だったという。彼が思索を止めるのは、1日1回の食事の時と就寝中だけだった。

 読者の方々の中にも身に覚えのある人はいるだろうと思う。新しいアイディアを出そうとしたり、問題を解決しようとする場合には、座っているよりも歩いているほうがはかどる。茂木健一郎も著書「創造する脳』の中で、歩くことが創造性を高める可能性を指摘している。

1
nextpage

「経営×オフィス」を知る ワークスタイルで変わるオフィスとは?

  • ワークスタイルの変革とオフィスの変化
  • 創造性を育む「クリエイティブ・オフィス」の作り方
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 働き方の多様化が進むほどオフィスの役割は重要になる 新しいワークスタイルとオフィスの進化

OFFICE TOPICS 働く場所・働き方・働く人

「経営×オフィス」を見る 理想のオフィスのつくり方

 

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧