DOL特別レポート
2015年2月25日 樋口直哉 [小説家・料理人]

なぜ「Noma」は世界一のレストランなのか

nomaの代名詞と言ってもいい、エビに蟻がのせられた料理。Noma Tokyoで提供されたのはボタンエビだが、写真は材料手配の都合でシマエビ。蟻は防衛本能で蟻酸を出すので、酸味が弱く感じられたら食べ方に問題があるのかも。子どもの頃、遊びで蟻とか食べましたよね。いや、そんなことない?
写真提供:服部栄養専門学校

 去年の暮れから「Nomaが日本に来る」という話題で高級レストラン業界は持ちきりだった。

 デンマーク、コペンハーゲンにある『Noma』はイギリスの雑誌が主催する「世界のベスト・レストラン50」で1位を4回も獲得しているレストランだ。その店がスタッフごと日本に引っ越してきて、マンダリンオリエンタルホテルで1月上旬から2月初旬までの期間限定レストランを開いた。

 ともあれこのサイトを読んでいる大多数の読者にとっては「なにそれ」という話だと思う。少し知っている方にはこんな反応が返ってくるかもしれない。

「Nomaって、あれだ。蟻を食べさせるところでしょう」

 コペンハーゲンの本店では「ヨーグルトと蟻」の料理を出している。今回の『Noma Tokyo』のメニューにも「蟻」を使った料理(ボタンエビに長野産の蟻をまぶしたもの)が登場した。

 料理だけではなく価格もインパクトがあった。『Noma Tokyo』は料理+ワイン・ペアリング(あるいはジュース・ペアリング)で6万3000円(これに13%のサービス料と8%の消費税がかかる)、単純に考えて一人当たり7万円である。宿泊込みのプランだと『1泊1室2名様 15万4000円より』という高価格だった。

 にもかかわらず、予定されていた1ヵ月(実際はさらに1週間延長された)の営業で用意できる2000席に対して、結局6万0000人の応募があったそうだ。当然、予約は速攻で埋まった。

 お金はあるところにはあるものだ……と若干遠い感じになってしまうが、今回の記事の主旨は『Nomaってなに?』というものである。Nomaはただ蟻に代表される、けったいな料理を食べさせるレストランではない。1軒のこのレストランはデンマークの経済まで変えたのだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


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