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元経産官僚・伊藤慎介の“天落”奮闘記

遅い乗り物が面白い!
「ななつ星」が見せた新しい価値

伊藤慎介 [株式会社rimOnO(リモノ)代表取締役社長]
【第8回】 2015年3月25日
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予約すら簡単に取れないほどの人気を誇る「ななつ星 in 九州」

 3月14日に北陸新幹線が開通した。東京からは距離のあった北陸地方が2時間半で接続されるようになり、大変便利になった。

 新幹線は速くて素晴らしい乗り物ではあるが、今回は、遅い乗り物にスポットライトを当てたい。これからは遅い乗り物が面白いのではないかと思うからだ。

 子どもの頃に買ってもらった乗り物の図鑑では、超音速の飛行機が飛び、大都市間はリニアモーターカーで結ばれるという未来予想図が描かれていたことを思い出す。

 戦後の高度成長期以来、乗り物の世界は少しでも速く、少しでも遠くという機能競争に明け暮れてきた。しかし、速く移動できることが当たり前となり、移動に関する価値の質的な変化が起き始めているように思う。

 電気自動車に挑戦している人間が言うのもおかしいが、乗り物の中でいま最も面白いのは鉄道ではないだろうか。

鉄道は動くレストランに
駅は夜10時まで営業しているデパ地下に

 JR九州が始めたクルーズトレインの「ななつ星 in 九州」には驚かされた。これまではクルーズトレインと言っても、トワイライトエクスプレスに代表されるように、ちゃんと目的地があり、その目的地までを鉄道で移動しながら豪華な食事を楽しむというのが主なコンセプトだった。

 しかし、ななつ星は博多から出発して博多に戻るというのが標準的なコースであり、「お客を目的地まで運ぶ」というこれまでの鉄道の常識を完全に覆してしまった。

 加えて、3泊4日の旅程において、九州各地の景色、食事、文化などを楽しみ続けるという、地域の魅力を再発見する旅行商品になっているという点も非常に斬新だと思う。

 ななつ星の登場によって、「A地点からB地点までを速やかに移動する」という鉄道の常識は覆され、線路が張り巡らされている各地域の魅力を列車の上で味わう「動くレストラン」、あるいは「動くホテル」という鉄道の新しい定義が追加されたのだ。

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伊藤慎介 [株式会社rimOnO(リモノ)代表取締役社長]

いとう・しんすけ/株式会社rimOnO(リモノ)代表取締役社長。1973年生まれ。京都大学大学院工学研究科卒業後、1999年に通商産業省(現、経済産業省)に入省。経済産業省では、自動車用蓄電池の技術開発プロジェクト、スマートハウスプロジェクト、スマートコミュニティプロジェクトなどの国家プロジェクトを立ち上げた後、2011~2013年には航空機武器宇宙産業課において航空機産業政策に従事。2014年7月に経済産業省を退官し、超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnOをznug design根津孝太と共に設立。


元経産官僚・伊藤慎介の“天落”奮闘記

経済産業省の官僚としてキャリアを積んできた伊藤慎介氏。しかし、新しいコンセプトの電気自動車を世に出すべく退官。株式会社rimOnOを設立した。官僚として定年まで勤めて政府系団体のポストに就くのが“天下り”だが、伊藤氏は官僚という“天”の地位から“下る”のではなく自ら“落ち”、リスクを背負って起業した。しかし、伊藤氏はそれによって産業政策についての新たな視点を得た。本連載では今の日本に求められるイノベーションとは何なのか、新たな産業の創造には何が必要なのか、官僚を辞めリスクをとって起業し、奮闘したからこそ見えてきた視点・視角をお届けする。

「元経産官僚・伊藤慎介の“天落”奮闘記」

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