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3.11から4年が経ったいま、
我々の言葉の力が試されている
——社会学者・開沼博

開沼 博 [社会学者],和合亮一
2015年3月30日
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2015年2月11日。福島県福島市で、除染や放射線に関して、地元で生活するさまざまな立場の人が意見交換する「ポジティブカフェ」が開かれた。最終回は、第1回第2回を踏まえて、福島県在住の詩人であり、高校の国語教師でもある和合亮一氏と、開沼博氏の対話をお送りする。

不安や不満をどう言葉にしていくのか

開沼前回前々回の話を振り返っての率直なご感想を聞きたいのですが、いかがでしょうか。

和合 語りきれないくらい多岐にわたり、内容が大変詰まっていました。さまざまな方々に誠実に接してお話を聞くことが、直接的コミュニケーションの大切さであるという話もありましたが、最も大事なのは誠実な姿ではないかなと思います。私も福島に暮らしていますので、ここにいる皆さんと同じ気持ちでいます。みんな一生懸命やっていることは変わりありません。同じ座標に立ち、そして、こんがらがっている。

 震災を経験して、我々はどう生きていけばよいのか。この問題を我々で見つめ合い、誠実に話し合ってこそ、内発して外側に発信できると思います。登壇者のなかにも、再生と言いますか、温度差と言いますか、そういうものに葛藤を抱いている姿もすごく見えてきました。震災から4年が経ちますが、膝をつき合わせて話をすることが、この問題を車座になって話をすること、そんな気持ちでこれから取組むことが大事だと思います。

 ここで暮らしていくと決めた我々が、福島をどんなふうに見つめて、それを子どもたちに伝えていくかということ。それを我々が一所懸命やることです。子どもたちは必ず後ろ姿を見ています。それが、これから必要な見つめ合いの第一歩だと思いました。

開沼 和合さんは県内の高校の国語教師でいらっしゃいますし、詩人として言葉を扱うお仕事もされています。「不安や不満をどういうふうに言葉にしていくのか」。おそらく、これは放射線や除染だけに限らず、さまざまなことに共通する問いでしょう。

 和合さんにとって、詩を書く動機にも、「不安や不満をどう言葉にしていくのか」という問いは関わってくるのではないでしょうか。不安・不満に限らず、喜びや悲しみかもしれない。何か大きな感情の塊があって、それをどう言葉にするか。言葉にしていくことで、自分自信の気持ちが明確になったり、変わったり、あるいは、他者とその感情を共有していくような場もできてくるのかなと思ったりします。

 いかにして不安や不満を言葉に変えて、あるいは震災から4年が経つなかで、他者とよい形で感情を共有していく場をつくるのか。現時点のお考えを教えてください。

和合 開沼さんもそうですが、特に福島県出身者や福島にゆかりがある人、あるいは、そうでない人も、実は全員がつながりを持っています。「間接的震災」という言葉があるそうです。阪神・淡路大震災で聞いた言葉ですが、この震災を考えるにあたり心を傷めていれば、それは間接震災という言葉になるそうです。間接震災で心を傷めている人は、日本全国、世界中にたくさんいます。我々の時間というのは、そういう方々と一緒にあるのかもしれません。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 

和合亮一(わごう・りょういち)

1968年、福島市生まれ。現代詩人として活躍しつつ、国語教師として高校の教壇に立つ。第1詩集『After』で第4回中原中也賞受賞。第4詩集『地球頭脳詩篇』で第47回晩翠賞受賞。2011年3月11日の東日本大震災以降、ツイッター上で詩を投稿し、『詩の礫』(徳間書店)、『詩ノ黙礼』(新潮社)、『詩の邂逅』(朝日新聞出版社)を3冊同時刊行。これらの作品は「つぶてソング」「貝殻のうた」他、楽曲にもなる。最新作『詩の礫 起承転転』(徳間書店)を2013年3月に刊行。
オフィシャルウェブサイト:http://wago2828.com/
Twitter:@wago2828

 


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