交渉妥結か漂流か。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉はこれから数週間が最大の山場となる。夏前までに大筋合意に至らなければ、交渉は2017年以降に事実上先送りされる可能性が高まる。大筋合意まであと一歩のところにあるが、最後の一歩を前に足踏みが続いている。

「3月も春、4月も春、5月も春」
崩れた楽観的なシナリオ

瀬戸際のTPP交渉、<br />5月合意できなければ空中分解もコメをはじめとする農産物の自由化は、依然としてTPP交渉の難問の一つだ
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 2015年初には、日本を含むTPP交渉参加国の間で楽観的なムードが漂っていた。

 1月末には事務レベルトップの会合である首席交渉官会合を開催して地ならしをし、2月には日米二国間で農産物・自動車等の問題につき閣僚協議で合意し、2月末から3月半ばくらいにTPP閣僚会合を開催して大筋合意に至る。そんなシナリオが交渉参加各国に広まっていたのである。交渉を担当する甘利明・経済財政担当相は、「春の早いうち」の合意への期待を再三示していた。

 しかし、このシナリオは崩れていく。甘利担当相は2月20日の記者会見で閣僚会合の開催時期につき、「春の早い時期ということはなかなか厳しいかもしれませんが、春のうちには開催ができるのではないか」、「3月も春、4月も春、5月も春」、「6月は初夏」と、当初見込みから後ズレするとの認識を示した。この後、閣僚会合開催の時期は不透明になり、3月15日まで開催されていた首席交渉官会合も、閣僚会合開催への道筋をつけるには至らなかった。

 交渉が足踏みを続けている主な理由は3点挙げられる。(1)日米二国間の協議が決着をみていないこと、(2)知的財産分野等で全体交渉が難航していること、(3)米議会で大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議が進んでいないこと、である。

依然として難問が残る日米協議
両国の合意なければ全体も進展しない

 日米二国間協議は断続的に開催され、3月には6日まで東京で、首席交渉官会合と並行して12日までハワイで行われたが、日米間には依然「難しい問題が残っている」(3月6日、大江博首席交渉官代理)。難問は、日本の農産物市場の開放と自動車貿易と伝えらる。

 日本の農産物市場の開放については、いわゆる「聖域」であるコメ、牛肉・豚肉、乳製品等の自由化が問題となっている。コメで米国向けの輸入枠を設けるなどといった日本側の様々な自由化案が報じらるが、いずれも日本政府によって否定されている。