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「引きこもり」するオトナたち

素手でパンが食べられないことも
強迫性障害のリアル

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第235回】 2015年3月26日
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 「兵庫県淡路島の事件を見ていると、(5人を殺害した容疑者の40歳男性は)僕と経歴の似ている部分があります」

 そう明かすのは、地方の小さな街に住む30歳代後半のAさん。

 人目を避けるようにしてやってきたAさんとは、その地方では比較的大きなターミナルの近くにある、カラオケボックスで待ち合わせて面会した。

 Aさんは社会とつながりがないばかりか、家庭でも母親以外とは会話がなく、自浄作用のない「機能不全家族」に苦しむ。それでも「家族」という枠組みだけは維持している。

 小学生の頃に受けたいじめをきっかけに不登校になり、30年近く、実家で引きこもり状態が続いている。

強迫性障害を抱える人の中には、パンを素手で食べられない人もいるという

 外出するのは、週に1度、日用品を買い出しに行くときくらい。食事は、親が作ったものをみんなで食べる。

 ずっと後になって、「強迫性障害(強迫神経症)」あるいは「うつ」と診断された。

 ひどいときには、半日ほど入浴し続けることもある。

 そんなAさんは、淡路島の事件の後、周囲の目を気にして、「自分のことが連想されてしまうのではないか」と脅える。

 「ただ、僕が抱えている強迫性障害には、幻聴幻覚の症状はありませんし、他人に危害を加えられるという妄想がある病気ではありません。僕自身も家族、他人両方含め、犯罪をする気もまったくないです」

いじめ、両親・姉との不仲…
機能不全に陥った家族の実態

 不登校になったのは、小学校時代のいじめがきっかけだった。

 「死ね」などと、クラスメートから罵られた。

 家族は把握していたが、何も助けてくれなかった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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