採用に関する企業の問題認識

 多くの企業の人事担当者にとって、「どうしたら優秀な人材を採用できるのか」という課題は、長年にわたり頭を悩ませてきているテーマであろう。

 われわれのクライアントの中でも、採用の準備時期になると、「どうすれば質のよい母集団が形成できるのか」「本当に母集団を広げることに意味があるのか」「内定を出した優秀人材を確実に引き留められる効率的な手段はないのか」など、採用にまつわるさまざまな悩みを聞くことが多くなる。

 こうした課題に対して、データアナリティクスの考え方を活用することにより、有効な打ち手を見いだしている企業があることをご存じだろうか。本稿では、まず先進的な企業がどういった取り組みを行っているかを紹介していきたい。

月間10万件の履歴書から
優秀人材を選ぶグーグルのシステム

 採用活動におけるデータ分析の活用は、近年特に外資系企業を中心として進みつつある。その代表格となるのはグーグルであろう。

 本連載第1回の内容でも触れたように、グーグルでは人材マネジメント上のさまざまな領域にデータ分析の概念を組み入れ、その意思決定に活用してきており、これは採用の領域においても例外ではない。

 グーグルの採用といえば「グーグルらしさ」という独特な採用基準を組み入れていることが有名であるが、それ以上に特筆すべきは、月間で10万件という履歴書が送付される時期もあるそのボリュームであり、さらには、その膨大な候補者の中から優秀な人材を見極める選考プロセスである。

 グーグルでは、経歴や大学での成績に基づく分析はもとより、採用応募者に対するオンラインでのサーベイを通じて、「コンピュータに関心を持ち始めた年齢」「非営利団体の参加・創設経験」から、「志向性」「判断基準」を見極めるような過去の経験に至るまでの質問を行っており、これらの情報は0~100の範囲でスコア化して採用の判断基準の1つとして活用している。

 こうした質問は、過去のハイパフォーマーなどのさまざまなデータ分析の結果に基づいて構成され、数多(あまた)ある候補者の中からグーグルという競争環境に適応できる人材を選び抜く基準の1つとして大きな役割を果たしているのである。