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医療・介護 大転換

介護家族の健康状態まで診てくれるのに
「訪問看護」が全然足りないワケ

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第28回】 2015年4月15日
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「最期は自宅で」を可能にしやすい
「訪問看護」

Photo:yuuuu-Fotolia.com

 医者が患者の自宅に来て診察することはよく知られている。往診である。だが、看護師が同じように一人で自宅に来て、薬の管理や注射など様々の医療ケアをしてくれることは、意外とあまり知られていない。訪問看護という業務である。

 医師にはなかなか聞き難い病気のことでも、看護師には尋ねやすい。自宅に来てくれれば、なお一段と気安く声を掛けられる。医療だけでなく、食事や入浴、外出機会など日々の過ごし方についても相談にのってくれる。

 とりわけ、足腰に変調をきたし、通院がままならない要介護の高齢者にとっては、まことに心強い存在だろう。高齢者は複数の持病を抱えており、大病院で複数の診療科を回るのは一苦労だからだ。医師が自宅に来てくれるのは、通院困難な患者に限られる。だが、看護師はオーケーである。

 こんなに重宝で30年以上の歴史があるにもかかわらず、なぜ認知度が低いのだろうか。答えは明白。身近に広がっていないからだ。

 訪問看護は看護師が患者の暮らす場所に出向いて業務をするが、病院と違って実に幅広い役割を担う。看護師の業務には、そもそも2種類ある。保健師助産師看護師法(保助看法)第5条。看護師を「傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話(1)又は診療の補助(2)を行うことを業とする者をいう」と定義している。

 手術後の管理や薬の投与、血液検査のための注射などは(2)の「診療の補助」にあたり、病院勤務の看護師の主要業務である。もう一つの(1)の「療養上の世話」は、食事や排せつの介助、体重や尿の量、皮膚の状態の観察、水分や食事の量の把握、入浴法の助言など生活全般にわたる見守りとアドバイスだ。

 要介護高齢者の自宅への訪問では、この(1)が重視される。というのも、手術によって病を克服できる若年者と違い、高齢者は完全には治らない様々の病と共存しながら暮らしているからだ。認知症や糖尿病、ペースメーカーの装着、うつ症状など多岐にわたる。

 「この料理は食べてもいいのか」「散歩はどのくらいまで良いの」と言った疑問が本人や家族から受ければきちんと答えていく。先々を予測しながら日々の暮らしを支える。

 精神・心理面の忠告や介護家族の健康状態まで見極める。実に多様な分野にまたがり、暮らしのコンシェルジェという側面も持つ。さらに、本人や家族から信頼を得た延長線上で、看取りまでサポートするケースが多い。

 病院ではローテーションで業務を分担するが、訪問看護は同じ患者にずっと付き添い、寄り添う。病院と違って患者宅で1人で決断を迫られる。仕事のやりがいはこの上ない。「こんなに信頼され充実した内容だとは」と病院から転身した訪問看護師たちは異口同音に話す。

 事実、訪問看護の利用者が多い都道府県ほど自宅で亡くなる人の比率が高い。滋賀、兵庫、東京、大阪などでは人口千人当たりの訪看利用者が15人以上で、自宅死の割合は14%以上となっている。これに対し、利用者が10人以下の佐賀、宮崎、福岡では自宅死が9%以下だ。「最期は自宅で」という多くの人の願望が叶えられるのは、訪問看護の普及にかかっているとも言えるだろう。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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