東証1部上場後、わずか2カ月半で下方修正したgumiなどの新興企業が、東京証券取引所の逆鱗に触れた。その怒りの矛先は主幹事を務める野村證券にまで及んでいる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
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東証マザーズへの上場を4月28日と目前に控えた、スマートフォン向けのニュースアプリを運営するGunosy(グノシー)をめぐり、新興市場が揺れている。
2012年11月設立のグノシーは、ダウンロード数は850万を超え、わずか2年半で上場にこぎ着けた。想定時価総額は、300億円を超える大型案件である。
ところが、ここにきて「本当にその株価で大丈夫なのか」という懸念が投資家に広がっている。
そもそも、グノシーはこれまで赤字。15年5月期決算こそ、売上高30億円、純利益500万円を見込むが、それでも予想PER(株価収益率)は5000倍と市場より桁違いに高い。
投資家のこのような不安のきっかけとなったのは、スマホゲームアプリを展開するgumiだった。
昨年12月に東証1部に新規上場後、黒字予想から一転、わずか2カ月半で赤字へと下方修正した。その後も韓国子会社で横領の疑いが発覚したほか、希望退職を100人募るなど、企業姿勢が問われる事態が続いている。株価も上場時の半値を切った。
gumiとグノシーはいずれもスマホ系アプリの新興企業だ。スマホアプリの特徴は、ポイントなどと引き換えにダウンロードを促す「リワード広告」を打ったり、テレビCMを展開したりして、株価算定に影響を与える利用者数を簡単に“買う”ことができる点だ。
アプリ利用者を増やせば、ベンチャーキャピタルから億単位の資金調達ができ、それを宣伝広告費に回してダウンロード数を増やし、さらに株価を引き上げてまた資金調達につなげる──こうした循環で急成長を導くことができた。
だが、利用者数の伸びが想定よりも鈍化すれば、宣伝広告の費用負担がかさみ、途端に利益が出なくなる“自転車操業”的なビジネスモデルの一面があり、今回はそれが露呈した。そのため「予想が甘かったのではないか」という見方が広まり、その余波は新興市場に影響を与えている。