「最近の若い女性はちやほやされていたいからずっと働き続けたいって言うんだよね。だから我が子を虐待するような恐ろしい事件が増えてるんですよ」
何を言っているかわからないと思いますが、私も何を言われているのかよくわかりませんでした。昨年、とある取材中に中年の男性から言われた言葉です。
日本の男女格差は142ヵ国中104位
いったん、この言葉はさておきます。昨年10月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数ランキングをご存知でしょうか。「経済活動の参加と機会」「教育」「健康と生存」「政治への関与」の4項目で男女格差を調べたものですが、この順位、日本は142ヵ国中104位でした。日本より順位が低いのはマレーシア(107位)や韓国(117位)などアジアの国もありますが、多くは中東やアフリカです。
4項目のうち、特に低いのは「経済活動の参加と機会」(102位)、「政治への関与」(129位)。日本社会における管理職の男女比は9対1と言われます。政府が2020年までに指導的地位に占める女性を30%までに引き上げる「202030」を打ち出すのも無理なからぬことに思えます。
とはいえ。現代の日本に生きる男女で、「日本は女性の権利が著しく損なわれているなあ」と感じている人は、どれほどいるでしょうか。この連載を始めるとき、D社の女性編集者Yさんから、「小川さん、実際に不平等を感じる機会ってありますか?」と聞かれました。Yさん自身はあまり感じたことがないという口ぶりでした。確かに、出版業界は他の業界と比べて格差が少ないように感じます。女性の意見も重宝されやすい業界です。
私は現在34歳です。文系大学院を卒業後、就職できなかったので2年ほどフリーライターをして、その後小さな編集プロダクションを男性の共同経営者と起ち上げました。就活でもフリーライターの頃も、会社を起ち上げてからのクライアントとのお付き合いでも、男尊女卑や、ジェンダー・ギャップを感じたことはあまりなかったように思います。学生時代、神保町の古書店でアルバイトをしようと思って募集が出ていた店へ電話をしたら「男性だけです」と断られたことがあり、後に「それってダメなヤツじゃないの」と言われましたが、書店って肉体労働だと聞くから仕方ないのかな、と特に腹は立ちませんでした。