ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

日本に足りない”職場の付き合い”の質を高める知恵

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第24回】 2015年4月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

日本文化の習得に熱心な外国人エリートが
どうしても理解できない「風習」とは?

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 先日、筆者の住むマレーシアで、日本のビジネスマナーを教えている日本人女性にインタビューする機会があった。もともと日本でのビジネス経験の長い彼女は、夫の赴任に伴ってマレーシアに来た。英語が堪能なので、それを活かした仕事として、ビジネスマナー講師を行っているという。

普段は「部長」と呼ばなくてはならないのに、飲み会ではさん付けでOK!? 外国人には理解が難しい、日本独特の「おつきあい」の時間 Photo:taa22-Fotolia.com

 彼女が最近研修を行った会社は、クアラルンプールを拠点とした若い会社で、創立してまだ2年である。だが、最近急激に業績を伸ばしており、先日クアラルンプール中心部の再開発計画を勝ち取り、日本の大手不動産会社と共同事業を始めることになった。

 社運がかかったビッグプロジェクトのうえ、日本の大手不動産と一緒に仕事をするのだから、下手なことはできない。そこで、エグゼクティブクラスの社員のほぼ全員が、彼女の研修を受けたそうだ。

 彼女が驚いたのは平均年齢がまだ30代のエグゼクティブたちの、旺盛な知識欲だ。彼らは、挨拶の仕方、名刺の渡し方、客への飲み物の出し方、会議の席の位置、タクシーなどでの座席場所の心得といったマナーを次々と学んでいくだけでなく、そういった表面的なマナーの背後にある日本人の考え方や日本文化についてもたくさん質問をしてくるのだという。例えば、お茶は茶碗に3割程度しか注がない、といった振る舞いについて、それ自体を理解するだけでなく、それが日本の茶の湯文化から来ていることまでを知ろうとする。

 彼らの熱心さには彼女も感服したそうだ。だが、ひとつ、彼らが何度彼女に尋ねても、また何度彼女が説明しても、いまひとつ理解できなかったことがあった。

 それは、仕事以外のインフォーマルなコミュニケーションの使い方だ。ある社員は、マレーシアに戻ってくる前、外国人社員として日本の大手建設会社に4年ほど勤めていたが、その時に最も困惑したのが、仕事の外での「おつきあい」だ。飲み会、懇親会から、ゴルフや社内運動会など、日本の、特に古い企業では、そういったおつきあいの時間はたくさんある。彼にとっては、それがどういう場なのかを理解するのがすごく難しかったという。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧